しかし無傷だったのが今でも謎である。
確か家の道路で一人でサッカーをしていた時の事だった。
孤独にドリブルにいそしむ僕の前に一台の車が現れた。
それは隣の家の人の車で駐車しようとゆっくりと侵入して来たのだ。
サッカーのトレーニングを瞬時にやめ、車の邪魔にならないように待機する。
我ながら出来た子供である笑
しかし、何かの弾みにボールが車の方にこぼれてしまったのを覚えている。
ちょうどボールが車の後輪に轢かれそうな感じなった。
「ボールが破裂する!」
車の心配よりもボールの心配をするところが子供である。
気付いたら自然に身体が反応していた。
ゆっくりと接近する車の後輪の前方に緩やかに転がっていくボールを弾こうと、右手が出た。
その瞬間であった。
ちょうど後輪がボールに乗り上げてしまったのだ。
そしてその隙間に何故か入る僕の右手笑
下から、地面→ボール→右手→後輪と行った具合に見事に挟み込まれてしまった。
その重さはセダンなので約一トン、後輪分なので四分の一の250キロが右手に掛かったのだ。
激痛が走るが、なかなか車はどけない。
十秒ぐらいした後、やっと車が乗り過ぎていった。
解放された僕は涙目になりながらボールを回収し、ダッシュで家の中に逃走を図る。
しかし、不思議と痛みも怪我も無く、無傷に生還したのである。
恐らく、下のボールがクッションとなりその重さを軽減してくれたのだろう。
しかし当時の僕としては「車に押しつぶされても怪我をしない鋼鉄の肉体を持つ男」と思い込んでしまったのである。
鋼マンとして友人達にふいて回ったのはいうまでもない。