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〈スーパーマラドーナ 落ち武者〉
武智正剛:どうもー、スーパーマラドーナです。おねがいしますー。
ねぇ、僕が武智といいましてねえ、こっちの暗そうな弱そうな頼んないねえ、
生きてんのか死んでんのかようわからんようなヤツがね、田中と言いましてね、おねがいしますねえ。
田中一彦:「おい、みんな!好きなもん同士でグループになれ!」
武智:何やねん。
田中:この言葉がトラウマです( ①14秒)
武智:知らんがな!
お前の学生時代の過去知らんがな、アホンダラぁ。
田中:すいませぇん
武智:やってますげどねえ。
田中:いやー、僕ねえ。
この前、血まみれの落ち武者の霊見たんですよ。
武智:血まみれの落ち武者の霊?
めっちゃ怖いやんけ。
田中:あるマンションに行った時、見てしまったんです。
武智:あるマンションに行った時?
田中:ピンポーン(コントイン)
武智:これ再現してくれてるみたいですね。
田中:ガチャ。
「どうもぉ」
「アヤちゃん。あっ、ユリちゃんどうも!」(②36秒)
武智:いきなり失礼やお前。
女の子の名前間違えんな。
田中:「どうぞ、上がってください」
武智:女の子の家みたいですねえ。
田中:「この前の飲み会以来やねえ」
武智:飲み会で知り合ったんですねえ。
田中:「あー、女の子の部屋初めてやわあ」
武智:あ、そう。
田中:「私も誰か上げるの初めてです。でも初めてが田中さんでよかった!」
武智:ええ?なんかいい感じですねえ。
田中:(女の尻をソフトタッチ)
「え?」
「あ、ゴメンゴメン。お尻触っていいんかなあって思って」(③57秒)
武智:ええワケないやろ、お前!
なんで向こう気ぃあるなと思たらお尻触ってええねん。
そんなんやから学生時代いじめられんねん、お前は。
田中:「田中さんってお笑いのお仕事されてましたよね。具体的にどんなことを?」
武智:あっ、気になるんですねえ。
田中:「あの、『なんでやねん』とか『逆や』とか言うてたら、お金が入ってくるみたいです」(④1分11秒)
武智:ナメんなよ!お前!
芸人全員でシバいたろか、お前は。
田中:「あと、『そんな事したら奥歯にウンコついてまうやろ』とか」(⑤1分18秒)
武智:いつ使うねんその言葉!
何やねん、奥歯にウンコって汚いなあ、もう!お前は…
田中:「そうなんですね…」
武智:引いてるやないか、女の子。(⑥1分26秒)
田中:「さっきスーパーに買い物に行ったんで、何か作りますね」
武智:手料理ねぇ!
田中:「大丈夫?俺、料理界の川越シェフって言われてんねんで?」(⑦1分31秒)
武智:料理界の川越シェフは、川越シェフや!
何言うてんの。
田中:トントントントン…(野菜切る音)
武智:てか、落ち武者の話どこいったん?(⑧1分38秒)
落ち武者待ってんねんけど、俺。
田中:「あの、アヤちゃん。あっ、ユリちゃんってさあ…」 (⑨1分42秒)
武智:それヤメろ言うてんねん!
失礼やで!だからもう。
田中:「一人暮らししてるけど両親は何処に住んでんの?」
武智:ご両親ね。
田中:「両親は、私が小さい頃に亡くなりました」
武智:あら…
田中:「その…病気で?」
「いえ。交通事故です」
武智:そっか…
田中:「あぁ…二人、とも?」
「はい…二人とも…」
「即死…やったん?」(⑩2分5秒)
武智:もうヤメたれや!オイ!
「即死やったん?」ってどんな質問やねん!
失礼にもほどがあるやろ、お前はもう!
田中:「だから私、決めたんです。両親の分まで精一杯生きよって!」
武智:偉い!
田中:「もう、出来たら早よ作って!」(⑪2分17秒)
武智:死ねやお前もう!
お前、人の気持ちとか判らんのかマジでもう。腹立つう…
田中:トントントントントントン …(野菜切る音)
武智:何やねんコイツ。
田中:(何か閃く)
武智:何やねん?
田中:(引き出しを開ける)
武智:引き出しとか勝手に開けんなよ?
田中:(パンティーを取り出し、匂いを嗅ぐ)
武智:パンティー?
田中:(それを被る)
武智:被んなよ、オイ!
田中:「ねえねえ!」
「やめて下さい!」
「…ゴメン」(首かしげる)(⑫2分35秒)
武智:…どうなる予定やったん!?
お前の中ではこれ、最終これどうなる予定やったん!?なあ?
田中:「出来ました。肉じゃがです」
武智:出来たんかよ。
田中:「わあ、美味しそぉぉぉ〜ウィ!!」(⑬2分50秒)
武智:情緒不安定かお前、オイ!
怖すぎんねん、さっきからもう…
田中:「ありがとう。…あっ、 手ごめん」
「あっ、いえ」
武智:え?手ェ触れたみたい。
田中:「あの、あの時の返事、まだ聞いてないねんけど?」
武智:ええ!?
田中:「即死やったかどうか」(⑭3分2秒)
武智:それいらんねん!だからもう!
即死かどうか聞いて、どうしたいねんお前は、もう!
田中:「っていうか、田中さんって向井理さんに似てますよねえ!」(⑮3分9秒)
武智:目、腐ってんのかコイツ!
田中:「そういうあなたも、香川照之さんに似てますね!」(⑯3分14秒)
武智:ちょっとお前!ヤメたれや、もう!
男でもあんまおらん顔やぞ!
似てても絶対言うなアホ!お前は!
田中:「可愛いワンちゃんの写真!」
武智:えぇ?
田中:「ペロっていうんですけど、一ヶ月前に病気で死んじゃって…」
武智:ハァ…
田中:「もう、さっきから死んでばっかりやん!w」(⑰3分29秒)
武智:(絶句)
田中:(食事しながら)
「…もう、ボケなんやから笑ってぇやん!」(⑱3分33秒)
武智:笑えるか!アホ!
お前、頭おかしいんか!?
自分が何言うてんかわかってんのか!?
田中:「照之さん、あっユリちゃん」(⑲3分39秒)
武智:香川やないかい!!
香川はええねん!
てか、何の話してんねんさっきから!
最初、こんな話違うかったやろオイ、なあ!?
田中:ピーンポーン
「ユリー!」
武智:えぇ?
田中:「彼氏が急に来ちゃった!」
武智:彼氏!?
田中:「早く隠れて!」
武智:とんでもない女やった、オイ!
田中:ガチャ。
「ここに荷物一杯やな…」
武智:早よ隠れな、お前!
田中:ガチャ。
「ここも一杯でござる」(⑳3分52秒)
「すいません」
ガチャ。(閉める音)
武智:今の落ち武者や!オイ!!
出た出た出た!!
落ち武者出たって!
出た出た、オイ!
田中:ガチャ。
「うわ!彼氏や!」
武智:玄関開けてどうすんねん、オイ。
彼氏に姿見られてもうたやないか。
田中:ドン(ドア蹴る)
「誰やお前!ケツから手ェ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろか!」
武智:怒ってる…
田中:「へえ?ケツから手ェ突っ込んで奥歯…?いやそんな事したら、奥歯にウンコついてまうやろ!」(㉑4分9秒)
武智:さっきのツッコミやないかい!オイ!!
使える場所あったんかいコレ、オイ!?
田中:(被っていたパンティを脱ぐ)(㉒4分 15秒)
武智:…ずっとパンティ被ってた!
コイツ、途中から今まで、ずっとパンティ被ってた!
田中:そうなんですよ、ずっとパンティ被ってたん…(㉓4分22秒)
武智:急に喋ってくんな!
もうええわ。どうもありがとうございました。(4分26秒、笑いポイント23個)
〈全体の分析〉
266秒と持ち時間ギリギリで笑いポイントとしては23個と手数自体は前2組と比べてちょっと少ないのが特徴です。(メイプルは230秒で23個、馬鹿よは260秒で28個)
とは言っても、ストーリーに入り込み、その中の流れで笑いをとろうとしていたので、手数に関してはこれぐらいでも妥当でしょう。
一応、コント漫才の形式の形式をとっており、その中でも、ボケの田中が体験談を落語風会話スタイルで回顧するというのがやや変則的。
ツッコミはひたすら実況解説的にツッコみ、話の流れをいちいち止めたり、確認をとったりしないのがこの漫才のミソであり、コント漫才にありがちなストーリーを止めて、仕切り直すという時間の無駄を省いているのが特徴的です。
同時にボケも、ツッコミに反応することなく淡々と話を進めており、まあ、過去の話なので、いちいち突っ込まれてもストーリー改変できないという説得性を持っています。
スーパーマラドーナの特徴としては、どう見てもヤンキーいじめっ子の武智とどう見ても貧弱いじめられっ子田中の対比というのがあります。
露骨に両極端すぎるため、見る人によっては、武智の単なるツッコミが、本人の口の悪さも加えて、暴力性溢れてしまいどう考えても、いじめの構図に見えてしまうのが懸念材料としてあります。
それを意識してか、直接は会話をしないというスタイルにたどり着いたのではないかと個人的には判断しています。
さらには、コント中の田中のキャラを失礼クズに仕立て上げることにより、武智の暴力的なツッコミの強さに正当性を確保しているのも見事。
持ち味ゆえに生み出されてしまう歪みを見事、独自スタイルとしてネタ内でも消化し、比較的見る人を選ばない構図を生み出しています。
しかし、掴みの武智による田中への紹介や、「だからいじめられるんや」みたいなのはやはりまだ直接的であり、もっと間接的にやってもいいのでは?と感じてしまいました。
ただ、やや乱暴ではありますが、「どう見てもいじめられっ子」という印象をフリとして直接的に固定化し、そのイメージからのズレで「そういう奴は実は狂ってる」というボケを鮮やかに見せるため、とも解釈できるでしょう。
この漫才のキモはやはり終盤にある怒涛の伏線回収にであり、いかにもM-1を獲りに来たらしい、4分間における作品性の高さはこの漫才がトップではないかなと感じさせられました。
おそらく台本-1グランプリなら優勝でしょう笑
落ち武者の話、奥歯ウンコ、パンティ被りという三要素が効果的に発揮され、 その伏線の仕込み方もストーリー的にも自然に組み込まれているのがお見事。
最終的には、漫才なのに掛け合いをしないというスタイルすらオチとして作用させ、自然に閉じる印象を与えています。
そして、ボケ方も役割に入り込んでいますが、あのみてくれの田中が淡々と失礼ボケをかますというギャップが非常にマッチしていると感じます。
また、ツッコミも顔の演技やフリの段階では話を柔らかい口調で咀嚼説明し、ボケたら間髪入れず怒鳴りツッコミというメリハリがついていて非常に丁寧。
ちゃんと客の方を向いて漫才するという意味では、劇場を持ちたくさん漫才をする機会のある吉本の芸人はやっぱりそこらへんの意識が違うなーと思わされました。
〈笑いポイント一覧〉
この言葉がトラウマです( ①14秒)
毎回やってる定番の掴みですね。
まあ、掴みなんで「好きなもん同士でグループになれ」というあるあるネタ。
ただ、M-1の舞台ならばもうちょっと捻ってもいいような気がします。
安直すぎるというか笑(安直だから掴みなんですけどね)
「アヤちゃん。あっ、ユリちゃんどうも!」(②36秒)
ササッと導入を済ませ、無駄のないコントイン。
武智がすかさず田中の言ったことを繰り返し、コントインした状況を説明するという丁寧さがいいです。
そっからの今後のキャラクター性を表すような失礼ボケ。
「いきなり失礼やな」というツッコミフレーズからも、印象づけに用意周到。
このボケは何度も重ねられるので、忘れた頃に使うと非常に便利。
(女の尻をソフトタッチ)
「え?」
「あ、ゴメンゴメン。お尻触っていいんかなあって思って」(③57秒)
20秒程度をかけてからのサイコ寄りの失礼ボケを重ねます。
この時点ではどこに落ち武者が出てくるのか気になるため、ストーリーに時間をかけてもいうほど間延び感が出ないのが見事。
ボケる前は必ず武智の合いの手が凄い丁寧に柔らかなのが、ボケのパワーを増強させています。
ただ、ツッコミの「そんなんやからイジメられるねん」というのはひねりがないというか。
そんなん言うまでもなく見た目で分かっちゃうんですから、例えとかで一捻り欲しかった気がします。
ネタは繊細なのに、こういうとこはガサツ笑
「あの、『なんでやねん』とか『逆や』とか言うてたら、お金が入ってくるみたいです」(④1分11秒)
少し方向性の違うボケをここで仕込みます。
というか、その次の伏線としてのボケを伏線として気付かせないための工夫ですね。
木は森に隠す的な。
「あと、『そんな事したら奥歯にウンコついてまうやろ』とか」(⑤1分18秒)
そして被せの二発目兼伏線ボケ。
単純に一発目にこのボケをやっちゃったら露骨過ぎるので、二発目のないないネタのボケとしてカモフラージュ偽装。
ただ、この時点で落ち武者の話と言いながら、落ち武者のおの字すら出てきてないため、後半作用するのでは?と色々疑いながら見てる人は、このボケも少々無理やりというかひっかかる要素であったと思います。
また、武智のツッコミがちゃんと「奥歯にウンコ」を反芻してるのが、なんとも印象付けのためというか、書き起こすと案外大胆で露骨笑
引いてるやないか、女の子。(⑥1分26秒)
落語スタイルなので情景が浮かび辛くても、武智の自信に満ち溢れるツッコミが登場人物の状況を断定してくれるのでいいですよね。
彼が目となって、情景描写の補強をゴリゴリに行ってくれます。
「大丈夫?俺、料理界の川越シェフって言われてんねんで?」(⑦1分31秒)
ストーリーは女が料理を振る舞うことへと進行。
考えボケまでとも言わないまでも、ちょっと方向性の違うベタなボケ。
武智のツッコミが「料理界の川越シェフは、」でお客さんの方を向き、指摘ポイントを仰ぎ、そっから一拍開け、「川越シェフや」で田中の方を見て突っ込むなど丁寧さがあります。
てか、落ち武者の話どこいったん?(⑧1分38秒)
そして、コントインしてからちょうど一分経過したあたりで、落ち武者の話へのツッコミ。
あくまでも落ち武者の話であるという補強と、集中できなかった人への配慮。
まあ、こういうツッコミされると「結局、出てこない」パターンか「最後にチョロっと出てくる」パターンの二つに絞られます。
「あの、アヤちゃん。あっ、ユリちゃんってさあ…」 (⑨1分42秒)
そして一分ぶりの天丼。
やはり、人間の心理的に天丼は一分程度間を空けるのが一番効果的なんでしょうか。
こういうの誰か研究して欲しいです。
あと、ネタ中でこの手のボケ以外で「ユリちゃん」と一切呼んでいないところにもディティールとしてこだわっています。
このネタにはミステリ作品を読んでるみたいな繊細さがあります。
「あぁ…二人、とも?」
「はい…二人とも…」
「即死、やったん?」(⑩2分5秒)
そして、失礼キャラを生かすのには絶好のやり方、不謹慎ボケが発動。
20秒程度かけ、丁寧にシリアスな雰囲気を作り出す。
そして、「二人とも?」のことでじわじわ失礼を見る人の脳裏に思い浮かべさせ、「即死」というど直球を引き出したところで、代弁するかのようなツッコミ!
ここがハマれば、このネタは獲ったも同然です。
「もう、出来たら早よ作って!」(⑪2分17秒)
そして、それに彼女は激情することなく、未来へ希望を持ち始めます。
しかし、そっからの重ねでさらなる失礼ボケ連続。
武智の「偉い!」というあざといまでもの感情の方向転換が、それを逆撫でする田中のボケを効果的に演出しています。
そして、本来の彼らの問題であった武智の暴力的なツッコミ、ここでのワードは「死ねや!」というものですが、それに完全に正当性が確保!
まあ、これは誰でも死ねや!と思いますが笑
「ねえねえ!」
「やめて下さい!」
「…ゴメン」(首かしげる)(⑫2分35秒)
そして続けざまに、伏線としてのパンティ登場。
単体のボケとしても丁寧ですが、伏線としての印象付けのために、パンティを被るディティールもかなりゆっくりと分かりやすくしています。
首をかしげるという失礼キャラというかもはや、アスペ確定まで到達していますが、「…どうなる予定やったん!」 という一拍おくツッコミがこれまた見事。
会場の笑いが尾を引き、さらに溜めてから反復ツッコミでがっちり確保!
即死とパンティ二連発でもうハート掴みまくりです。
ただ、あんだけしっかりと被るマイムをしていたのに、脱ぎ去るというマイムをしていない時点で、被りっぱなしというのに気づいていた人も多かったのではないかと思います。
個人的には、そのあとの料理食べる件でパンツが邪魔で食べれないというボケに繋げるのかなーと思ってました。
「わあ、美味しそぉぉぉ〜ウィ!!」(⑬2分50秒)
そしてここでも別の方向性のボケを持って行き、もう田中が異常者であることを周知。
こういう失礼の積み重ねがあるからこそ、唐突な絶叫ボケというのは面白く作用するのです。
ここから、武智の態度も少し田中に引き気味なのが特徴的。
というか田中のパーソナルな部分のヤバさに気を取られ、落ち武者やパンティのことを完全に忘れてしまったという設定ですかね。
同時に観客にもそこを忘れさせるという代弁者・武智の上手さが光ります。
「即死やったかどうか」(⑭3分2秒)
そして、ストーリーを進行させ、手を触れるからの、あの時の返事という件へ。
武智もこういうボケの前は露骨に感情を切り替え、嬉しそうな「え!」を発しているのが白々しくて面白い笑
そこからちょうど一分のタイムラグを持ってからの、「即死」被せ。
やはり、忘れた頃に天丼をかますのに60秒が効果的と気づいてるんでしょうか。
即死確認の異常性がいいですよね笑
「っていうか、田中さんって向井理さんに似てますよねえ!」(⑮3分9秒)
そして三分経過したところでようやく女性側からのボケ。
女性側はボケないというルールを利用した個人的に大好きな件です。
方向性も別のところですし、武智の「目腐っとんのか」という投げやりな見離すようなツッコミが、見るものに「結局、両方バカなんだ」というあんだけ失礼な言動をされた彼女の心情への心配を払拭させる作用があります。
「そういうあなたも、香川照之さんに似てますね!」(⑯3分14秒)
からの舵戻し的な失礼ボケ。
実は予選では終盤の件の半沢直樹の土下座というものが組み込まれていたので、それの名残なんです。
決勝ではそこをマイナーチェンジしています。
しかし、芸能人大喜利として「女性に香川照之の顔」というのはある種正解。
「もう、さっきから死んでばっかりやん!w」(⑰3分29秒)
そして、30秒程度経過してからの死亡ネタ再び。
もうネタフリの時点でニヤニヤが止まりません笑
田中のボケ方も「笑顔」という異常性表現としてもさらに強まってるのがいいですね。
極め付きには、武智がツッコミにおいて何も発さず顔の演技だけで爆笑をもぎ取る!
完全にお客さん掴みきってます。
そしてボケる前にはちゃんと一旦、落ち込むという演技も忘れません。
(食事しながら)
「…もう、ボケなんやから笑ってぇやん!」(⑱3分33秒)
そして、畳み掛ける!
笑顔だけでなく、「飯食いながら」という異常性ディティールもこだわってます!
ツッコミも、絶句を通り越し、終盤に向けてボルテージがどんどん上昇してくるのも特徴。
「照之さん、あっユリちゃん」(⑲3分39秒)
名前間違え三発目。
次は約2分ぶりなので、天丼三発目は「2発目で一分待ったら次は2分待つ」というルールすら感じさせられますね。
安易にそのまんま繰り返すのではなく、ちゃんと先の香川照之を生かしています。 (先の香川からは25秒程度)
しかし、ここの「香川やないかい!」っていうツッコミの語感の良さが最高ですね。
名倉やないかい的な。
ツッコミにおいては関西弁に勝る言語はないと思わされてしまいます。
そして、再度武智が落ち武者というワードを隠しながら「最初、こんな話やなかったやろ!」というツッコミを発動させ、落ち武者パートへ備えさせます!
ガチャ。
「ここも一杯でござる」(ゼニ(⑳3分52秒)
「すいません」
ガチャ。(閉める音)
怒涛の伏線回収一発目。
まあ、ここは正直、落ち武者落ち武者散々フッていたので気付かれるのは混みでしょう。
気づいた人には「結局このネタのキモはこれでしょ?」と思わしといての、次の2発目、3発目が続きますので、逆に裏切りの笑いとしてはここで気付かせた方が効果的。
まあ、そうじゃないとしても、彼氏登場という緊急事態からのスピード感や、物語への食いつかせ感で丁寧に伏線を消化させようとしているのは確かです。
でも、一旦隠れ場所を間違えるのは見え見えすぎというかねえ。
とは言いつつも、効果的に作用し、拍手笑いをもぎ取ります!
というか冷静に見返してみると、落ち武者の演技ってあれで正解なの?w
「へえ?ケツから手ェ突っ込んで奥歯…?いやそんな事したら、奥歯にウンコついてまうやろ!」(㉑4分9秒)
彼氏対面からの「ケツから手ェ〜」の伏線回収へ向かいます。
武智による「彼氏登場からの姿見られた」という状況説明が丁寧!
また、「怒ってるぅ…」という演技をして、一旦そっちに気を引かせてるのが流石だなと。
約3分のラグがあるため、これは流石に効果的でしょう。
それもあってかこっちの方が拍手自体は強め!
(パンティを脱ぐ)(㉒4分15秒)
そして怒涛の三発目でパンティ回収。
こちらは1分40秒ぶりの登場。
素晴らしいんですが、意表を突く度としては奥歯ウンコをちょっと下回る。
しかし、怒涛の三連発というのが既にそういうのを気にさせないレベルまでボケを到達させてることには間違いないでしょう!
そうなんですよ、ずっとパンティ被ってたん…(㉓4分22秒)
オチは急に話しかけてくるという、やや変則的なコント漫才へのメタツッコミ。
こういうボケは大体、道中に挟んでくることが多いんですが、最後の最後にやるってのがオチとしてちょっとオシャレ笑
見返してみて気づいたんでけど、この漫才において武智はツッコミの際に田中に対して、ほとんど手を出していないんですよね。
即死被せの時に頭1発、香川の件で「やめたれや!」というセリフと共に、腕をはたくというジャブ感溢れるツッコミ2発という具合でして、やっぱり意図的に暴力的なイメージを避けようとしてたんだなと思わされてしまいます。
なので、この最後の顔面ビンタは我慢した末に発散され、より効果的に映ります。
このネタも解体しがいがありますね。
天丼や伏線回収までの時間がどのぐらいのタイムラグあると効果的に見えるのかや、伏線を張る時の工夫や印象付けのための露骨な反復など、漫才に限らず、文芸作品における構成で魅せる作品の効果的な作り方の参考になるのではないかと思いました。