M-1敗者復活でさらば青春の光がやった「娘さんをください」というネタに感銘を受けたので、漫才の切り口というのに重点を置いて自分でも作ってみました。
文字で羅列しているだけだと想像しづらいので、是非ともさらばの二人が演じてる様を思い浮かべながら読んでみてください。
あと、前回までのM-1のネタの研究の記事は途中でぶった切れてますが、また続きやるつもりはあります笑
今年の予選が始まるまでには完結させたいってモチベーションなので気長に。
〈さらば青春の光 仕立て屋の店員〉
東口宜隆:どうも、さらば青春の光です。
僕が東口で、
森田哲矢:僕が森田ともうします。よろしくお願いしますー
東口:いやー、森田よー、僕らね、若手若手って言ってますけどもうコンビ組んで7年ですよ!
森田:そやな、意外に早かったよなあ。
東口:そやでホンマ。
ちなみに、コンビを組み立ての頃のことって覚えとるか?
森田:覚えとるわ、そら。
忘れるわけないやろ。
特にあれやな。お笑い二人で始めようって思って、「まずは形からや!」ってことで二人でお揃いの衣装作りにいったやん。
東口:ああwあの店員さんか!
二人で衣装作りに一緒に仕立て屋行ったときのなあ。
森田:そうや。あの人や。
一緒になあ行った時やから忘れられんわ。
あの人のこと、未だに覚えとるやろ?
東口:そら一緒に行ったときやったもん!
しっかし、あの店員さんは傑作やったよなあ!
じゃあ、俺、あのときの店員さんやるから、お前、俺やれ!
森田:え?
東口:だから、俺があのときの店員さんやるから、お前は当時の俺をやってくれって言ってんねん。
森田:俺がお前をやんの?
東口:そやで?
まあ、細かいことはええねん。
あの店員さんが重要やろ?
(仕立て屋のマイム開始)
森田:(納得してないようだがコントイン)
おい、森田ー。ここが仕立て屋さんや。
ここでお揃いの衣装つくろうか?(森田らしき人が存在する空間に向かって)
ウィーン
東口:いらっしゃいませ。
本日はどのようなご要件でございましょうか?
森田:あの、僕ら、お笑い始めようと思ってて、かっこいいお揃いの衣装を作って欲しいんですよ。
なあ、森田?(森田空間へ向けて)
東口:さようでございますか。
ということは既製品ではなく、オーダーメイドの方がよろしいですよね?
森田:そうですねえ。
なあ?森田、ええやろ?(森田空間へ向けて)
東口:では、そういうことでしたら、早速採寸いたしましょうか?
そうしたら、 うーん、相方さんの方から先に採寸いたしますので、どうぞこちらに。
森田:(「俺やないんや」という顔)…相方。
東口:森田さん。(森田空間へ向けて)
森田:はい!
東口:え?
森田:あっ、スンマセン。僕今は東口でした。
東口:ああ、そう。
やっぱ、お笑いさん目指してるだけあって、面白いですね。
森田:いや…(照れ)
東口:では失礼して、(採寸のマイムを始める)
(森田空間へ向けて)…森田さん。
一応、ウエストが120cmなので、オーダーメイドの生地の方が別注になるんですがよろしいでしょうか?
森田:え?え?ちょっと待って。
当時の俺、ごっつデブなん!?( 素でのツッコミ)
東口:(無視してコント継続)森田さんぐらい体格のいい方ですとねえ、どうしてもねえ。
お高くなっちゃう可能性高いんですよねえ。
森田:待てや、7年前の俺の認識どうなってんねん!
東口:森田さん、失礼ですが身長の方は?あっ、2m12cm
森田:(上をみる)おいおいおい!待てや待てや!
俺マジでどうしたんや!
東口:では、こちらも別注の料金がかかりますけれど、よろしいですよね?
森田:え?ちょっと待ってくださいよ!
金とかそういうことやなくて!
東口:(森田空間と)なになに?相方も似たような体系をしてるので、同じような別注の衣装となると大変かもしれない?
(店員、東口役森田をみる)
ですよねー。
森田:ちょい待って!俺も同じ体系なん!これで!?
いや、俺やないけど!
東口:(東口役森田へ)ちなみに、どうされますかね?
成長した時のために、大きめに作りましょうかね?
森田:いや、これ以上大きくしたらアカン!
東口:(森田空間と森田の顔を見比べる)
そういえば、お二人同士顔そっくりですねえ!
双子さんですかね?
森田:(森田空間と顔を比べだす)
ええ…まあ…
そっくりっちゃ、そっくりですけど。
いや、違う違う!
そういうことやないやん!
東口:双子ではないんですね?
森田:双子でもない!
東口:しかし、お笑いコンビで同じ衣装でやるとしたら、両人メガネかけられているので、こちらの方はメガネ外された方がええと思うんですよねえ。
森田:両方メガネなん!?
東口:ええ、ちょっと双子でもないのにそっくりすぎて、なおかつお揃いのねえ、特徴的なメガネですとねえ。
ジョンレノンタイプの。
森田:ジョンレノンなんすか!
俺も!?
東口:はい。
違いました?
もしかして、タモリタイプのサングラスでしたっけ?
森田:それはさすがにちがう!
それは店員さんがおかしい!
そこはボケや!
メガネからのサングラスはさすがにボケや!
…おい!一回、止めよ!
東口:なんやねん、止めんなや。
森田:おかしいやろ…色々と。
東口:はぁ?
だいたい、お前、当時と同じ体型でおんなじ衣装今も着てるやん!
森田:はあ?
(自分の体をまじまじと確認する、恐怖におののく)
東口:ねえ、お客さん、こんなノッポでおデブちゃんですいませんねえ!
森田:お前はどう見えてんねん…?
東口:そら身長高くてデブですよ。ねえお客さん。
森田: (客に問いかけ)見えます?これが?
東口:あ、そういえば、お客さん。
彼ね、サングラスかけてるでしょ。
これを取るとわかるんですけどね、僕と顔がそっくりなんですわ!
森田: (自分と相手の見た目を確認)
そっくりちゃうやん!
グラサンなんてかけてないやん!
お客さん!どうなんすか!
東口:僕もね、見たとおり、彼とまったく同じ体系のふとっちょで、同じ顔のもんですから、街中でよく間違えられるんですよね。
森田: お前もデブのつもりなん!?
俺がで デブならお前もデブなん?しかも2m級の!?
東口:せやで。
ねえお客さん、変な見た目二人ですいませんねえ!
森田: 待て待て待て。
何かがおかしい!混沌や!
…東口、どうしたんや!?
東口:…俺は店員やで?
森田: は?
東口:俺は仕立て屋の店員や。
東口さんちゃうよ。
森田: は?
じゃあ、俺は誰やねん?
東口:お前は、東口やろ?
森田: じゃあ、森田は?
東口:お客さんの森田さん?
そこにおるやん(客席の方を指す)
森田: さっきからお客さんに話しかけてたのは…
東口:そうやで、俺は、仕立て屋に来てるお客さんの森田さんに話しかけてるんやで。
ねえ、森田さん?(客席に問いかける)
うんうん、似てるって言うてますよ。ああそうですか…
森田: …なんや?俺だけおかしいのか?
俺だけ認識が間違えてんのか?
あそこに森田がおるのか?俺は東口なんか?
東口:うっさいなあ。
…じゃあ、俺がお前の代わりに東口やるから、続きやろうや!
森田: …とったらアカン!
俺から東口をとったらアカンって!
お前店員で、森田あそこにおるんやから
お前が東口をとったら、俺がアカンわ!
東口:しゃーないなあ。
じゃあ、俺が東口やるから、お前は森田やれ!
森田: …そう!それでいいんや!
よかった!よかった!
一件落着や!
ホンマ、危ないとこやったわ!
東口:ちゃんとやれや?
(コントイン)
おい、森田ー。ここが仕立て屋さんや。
ここでお揃いの衣装つくろうか?
森田: そやなあ。ここやな。(嬉しそうに)
東口:ウィン
あっ、どうも。
あの、僕ら、お笑い始めようと思ってて、かっこいいお揃いの衣装を作って欲しいんですよ。
なあ、森田?
森田: せやせや。(噛み締めながら)
東口:オーダーメイド?
そうですねえ。
なあ?森田、ええやろ?
森田: せやせや!
これこれ!
東口:(森田と店員を見比べて)
店員さんと森田って似てるなあ!
森田: え?やめろや。
東口:似てますよねえ!
自分でも入ってきたときから似てるって思ってたって?
ですよねえ!
だって森田と似てるってことは、僕とも似てるって事ですからね!
森田: は?
だから、似てないやん!
百歩譲って、店員さんとは瓜二つとしてもええわ。
でもお前とは明らかに似てないやん!
東口:…ドレッドヘアーの話やで!?
森田: ドレッドヘアーの話なん!?
全員、ドレッドなん!?
東口:そうやで。
ですよねー、店員さん。
全員同じジャマイカの感じですよね!
森田: 止めろ止めろ止めろ!
東口:もう、どうしたいねん?
森田: ちゃうやろ!
店員さんの喋り方がおもろすぎたって話やろ!
ちゃんとやれや!
東口:そうやったか?
(誰もいない方を向いて)店員さんそんな変な喋り方でしたっけ?
森田: おるんかい!
恐怖と笑いは紙一重。
ももええわ。
東口&森田:どうもありがとうございました。
メイプル超合金編はこちら
馬鹿よ貴方は編はこちら
スーパーマラドーナ編はこちら
〈和牛 結婚式を抜け出す〉
川西賢志郎:どうも、えー和牛です。
お願いしますー。
水田信二:お願いしますー。
川西:あのーこれ昔から恋愛ドラマでよくあるパターンなんですけどね、
水田:なんでしょうか?
川西:ヒロインの女性が、結婚式を抜け出して本当に好きな人に会いに行くみたいなシーンあるじゃないですか。
水田:あー、よくありますね。
川西:僕、ああいうの素敵やなあと思うんですよー。
水田:ボクはね、全然素敵やとは思わないですね。(①15秒)
川西:(ん?という顔)
水田:だって、あのヒロインやってる事自分勝手すぎますもんね。
考えられへんよね。
キツいキツい、引く引く。(②20秒)
川西:いや、でも考えてみ?
水田:ん?
川西:ウエディングドレスのまま駆けつけてきて、
「水田くん。私やっぱりあなたのことが好きなの!」
こんなん言われたら嬉しないか?
水田:(コントイン)えっ?君さあ、ウエディングドレスで来たって事は、結婚式抜け出してきたん?
川西:うん、私やっぱり水田くんが好きって気づいてん。
水田:びっくりしたなあ。
滅茶苦茶迷惑かけてきてるやん。(③43秒)
えっ、式場大騒ぎにならんかった?
川西:…あっ、でも!彼が「アイツんとこ行けよ」って言ってくれたから、私ここに来る事が出来た訳で…
水田:あぁ、ちょっと待って待って待って。
ここに来てる事、彼のせいにしようとしてない?(④55秒)
それはちょっと違うんじゃない?
川西:そういうつもりはないよ。
水田:それは卑怯すぎるよね?
川西:違うよ。
水田:引く引く。
引いてる引いてる。(⑤1分)
川西:違う、違う。
…私、別に彼に「行けよ」って言われたから来た訳じゃないし、「行けよ」って言われてなくても来てたよ。
水田:あっ、元々来てくれるつもりやったん?
川西:うん!
水田:じゃあ、結婚式出たらアカンやん。(⑥1分12秒)
…何?じゃあ、最初から抜け出す気やった訳?
川西:…いや、最初からとかいう…
水田:なんやったらそのウエディングドレス選んでる時も、
「ねえねえ!私このドレスがいーなあ!」って言いながら「私ほんとは当日途中で抜け出すんやけどね」って思ってん?(⑦1分23秒)
川西:思ってないよ!
水田:「ねえ!ここの式場いいやん!ここに決めよお!」って言ってる時も、「ここやったら抜け出しやすそやなあ…」とか思ってん?(⑧1分28秒)
川西:思ってないって、だから!
水田:んな、向こうの彼には悪いなあとは思ったんや?
川西:当たり前やんか。
水田:じゃあ、どんな感じで来たん?
川西:え?
水田:彼に行けって言われて、どんな感じで来たん?
川西:それは「ありがとう」って言うて来たよ。
水田:そんなアッサリ言うて来たの?引く引く。(⑨1分40秒)
川西:今みたいな言い方じゃないよ、実際は。
水田:あっ、ほんなら実際のやつ見して?
川西:えぇ?
水田:だから、彼に「行け」って言われて、どんな感じで来たか実際の間ぁで見してみてって言ってんねん。
川西:なんでそんな事をせなアカンの!?
水田:「お前、本当はアイツのこと好きなんだろ?…行けよ!」
川西:(溜めて)「…ありがとう」
水田:OK。その感じで来たのね。(⑩2分1秒)
ほな、その間に何考えたん?
川西:え?
水田:「(溜めるムーブ)…ありがとう!」のここ(溜めるムーブ)で何考えたん?(⑪2分7秒)
川西:そんな顔してない私!
水田:なんか俺には行く前の助走つけたようにしか見えんかったんやけど。(⑫2分11秒)
川西:そんな訳ないやんか!
水田:やっぱアッサリ来てるやん。
川西:…私、水田くんが好きやからここ来てんで?
式抜け出したんは、水田くんと結婚したいからやねんで!?
水田:でも、そんなん言われても正直疑ってまうんよね。
「俺ん時の式もまた抜け出すんちゃうかな」って。(⑬2分23秒)
川西:えぇ…なんでそんなん言うの?
…わかった、もういい。戻る。
もう水田くんの事は嫌いになったから戻る!
水田:何て言うて戻るん?(⑭2分31秒)
…いや、言っとくけど式抜け出すより、戻る方が大変やで?(⑮2分36秒)
…「戻ってきたー!?」ってなるもん。(⑯2分40秒)
えっ?どうすんの?もう向こうに断られる可能性も今あんで、君?
川西:…ちゃんと謝ってもう一回、式やり直してもらいます!
水田:やり直すってどっからやり直すん?
えっ、誓いのとこからやり直すの?神父さん困るって。
だって、一回誓って裏切った奴がまた来んねんから。(⑰2分52秒)
…「ヤッパリ、チカイマスカ?」って。(⑱2分56秒)
…どうするん?
川西:…「誓います!」って言うよ!
水田:「Oh…Deja vu…」(⑲3分3秒)
…まあ、すごい変な空気なるよ、その場はね。
でも、それ君が身勝手な行動ばっかとるからやで?
何やっても許されるやと思ってるやろ。
そういう浅はかで傲慢な考え方まず直さなアカンで。
川西:何でそこまで言われなアカンの?
水田:いや、君がおかしいとこだらけやからやん。
だって、君は俺のこと好きやのに向こうの式出て、
んで、向こうに「行け」言われてこっち来て、今度また向こう戻るとかやってるやん。
そういう君のどっちつかずで中途半端な行動で周りがどんだけ迷惑かかってるかわ…
川西:じゃあ、どうしたらいいの!?
私、どうしたらいいの!?
水田:そういうとこやで。
「どうしたらいいの?」じゃないくて、どうしたいの?(⑳3分30秒)
…全部他人に決断さしてるやん。
自分が悪者になりたくない奴ってそうやって言うねん。
なんかあった時に「いや、私自分で決めてない!言う通りしただけやから!…
川西:なんでこんな事なってんの?(㉑3分41秒)
水田: …私違うの!」
責任取るつもりはないねん…
川西:なんでこんな事なったん?
水田:…自己責任、そう、そんなん関係ないねん。逃げ癖…
川西:こんな筈じゃなかった…(泣き出す)
水田:…ああ、泣かんといてよ。
好きな人の涙を見るのは辛いから。(㉒3分49秒)
川西:(!? )
水田:…勘違いせんといてや、ホンマに好きやねんで。
俺、この先の人生で君より好きな女性に出会う事はもう2度とないと思ってるよ。
川西:じゃあ、なんでそんな言うてくんの…!?(㉓3分59秒)
どうかしてるわ!
水田:フw、どうかしてるのはそっちやろw
だって、君は俺の事好きやのに向こうの式に出て…
川西:怖い!怖い!怖い!怖い!(㉔4分4秒)
水田:…向こうから戻ってきて、また向こうに戻るとこやってん?…
川西:待って待って待って!
水田:…なんで俺がわかってないん?
君が自分の間違えわかってくれたらこれ以上話さん…
川西:わかった、やめて!私が間違ってた、ごめんなさい!
水田:わかってくれたの?
川西:わかったよ、もう…!
水田:じゃあ、結婚してあげる!(㉕4分14秒)
川西:出来るかあ!
もうええわ。
水田&川西:ありがとうございました。(4分16秒、笑いポイント25個)
〈全体の分析〉
256秒で笑いポイントは25個といままでのコンビと比較するとちょうど平均辺りの手数となっています。
こちらもコント漫才となっており、特徴としては一旦コントに入るとボケもツッコミも両者役柄のまま進行し、素の人格に戻らずやりとりを続けるというもの。
そういう形式の漫才ってのは「コント」だと捉えられがちですが、この漫才のベースとしては、「結婚式を抜け出すというシチュエーションが素敵」と持論を展開する川西に、真っ向から反対する水田という構図が存在し、コントインしてからはそれぞれの主張を認めさせ合う「対決」となっているのがポイントなのです。
ただシチュエーションがやりたいのではなく、そのシチュエーションは素敵、素敵ではないと互いに主張を通し、論破したい論破されたくないという思いが根底に存在します。
ですから、コントインして彼氏と彼女をそれぞれ演じるというルールの中で、実際の水田と川西の主張がせめぎ合うというちょっと入り組んだ構造の漫才となっています。
したがって、「結婚式を抜け出してきた女」と「それに反対する屁理屈彼氏」というコントではなく、あくまで役を演じながらも導入時の水田と川西の人格がその役柄のセリフには介在するのが特徴。
ぱっと見、コントでもいいやんと思ってしまいがちですが、もしコントとしてこのネタをやろうと思うと、大前提として水田は結婚式を抜け出してくる彼女の事を待つ事はできません。
「抜け出してきて迷惑やろ」って最初に主張するので、設定としての抜け出してきた彼女を待ってるっていうシチュエーションは完全に矛盾が発生してしまうのです。
まあ、水田の職場にやってくるとか、そういうアレンジでコントとして成立させることは可能ですが、そうなるとまた別のベクトルのネタになってしまうのです。
第一、コントですと川西がウェディングドレス姿でやってくるってのもありますし、この漫才でやりたい事とはとブレが生じます笑
そして、典型的なコント漫才は「抜け出した花嫁やりたいから彼氏やって」のような協力体制を前提にした世界の中での非協力がボケとして笑いにつながるのですが、この漫才に関しては、最初から非協力体制下において始まり、その中で世界を崩さない(役割を降りれない、降りたら負け、というかボケがないので降りてツッコめない)というルールの下で、非協力合戦が行われるという構図になっています。
典型的なコント漫才だとすると、最初の「抜け出してきた」に対する、「めちゃくちゃ迷惑かけてるやん」というのが非協力というボケなので、「シチュエーションやりたいのに邪魔するな」という意味合いで突っ込む必要性があります。
まあ、形式的にはディベートなんですよね。
意地の張り合いというか、水田の正論に対して川西が役を降りて突っ込むとその時点で川西の負けが確定してしまうのでコントを降りる事はできないのです。
というか我々からすると水田の発言はボケですが、川西からするとボケでもなんでもなく、理屈っぽい正論をぶつけられてるだけなんですよ。
だからツッコミという役割を持ってますが、素の川西からするとツッコミどころが一個もないんですよ。 (勿論、劇中の彼女としての指摘はできますが)
現に素で突っ込むのも、オチの水田の「じゃあ、結婚してあげる!」というセリフだけですし、ここの部分だけが明らかに川西からしてもツッコミどころというかボケ扱いなんですよね。
よって、うがった見方をするならこの漫才のボケはひとつだけなのです。
つまり、対決形式であるため、あくまでも役割を演じながら自分の主張を有利に通せるか?というディベートの構図がこの漫才には発生しているといえるでしょう。
要するに喧嘩です笑
そして水田は自分の素と等しい人格を演じればいいのでまだ楽ですが、川西に関しては、「結婚式を抜け出してきた女」を演じながら、素敵さを問う必要性があるため、かなりハンデがあるというか、圧倒的に押され気味になってしまいます。
その典型的な女を演じると明らかに墓穴を掘ってしまい、水田はどんどん屁理屈で突っ掛かり論破していく様が実に爽快というか、このネタのキモであることは間違いないでしょう。
途中からは、自己中心的で短絡的思考の女性批判にシフトしていってるのがまた、ネタ製作者の思想が反映されまくっていて面白いです。
話の流れとしてはドラマでよくある結婚式を抜け出すシーンが素敵と主張する川西に対して、そんなことないと反論する水田。
実際に役柄に入り込みながらそれぞれの主張を通し合うようにコントイン。
「抜け出すのは迷惑」と正論を述べると女は「戻る」と言い出しますが、「それをやるのは大変やで」と正論をかまします。
そして、「どうすればいいの?」と困り果てる女に「人のせいにせず自分で考えろ」とこれまた正論をぶちまけ、最終的には「君のことが好きだからやってるんやで?」と狂気の愛発言が飛び出します。
それに対して、女は恐怖を感じますが、狂気を露わにした男の暴走を止めるために、己の過ちを認め、許しを乞います。
そして、「じゃあ結婚しよ」と狂気全開まで至ったところで、流石に論点ずれてきたため、川西が素のツッコミを行い、オチとなります。
とにかく演技力がこの漫才の9割ぐらいを占める要素であり、正直書き起こしてもほとんどその面白さのニュアンスは伝わらないでしょう。
ぜひ、実際の映像で確認することをお勧めします。
川西の顔の演技と女性的な仕草が非常に見事であり、本物の女性に見えてくるところが素晴らしいです。
対して水田も、本当の人格はどうか知りませんが、いかにも屁理屈正論を吐きそうなキャラクターとしては完璧なルックスと演じ方であり、自分たちの持ち味を最大限に発揮しているネタであることは間違いないでしょう。
表情や言い方などの小技でのボケ方も器用ですし、今回の決勝メンバーの中では両者ともに一番漫才としての演技が上手いのではないかと思いました。
二人の掛け合いも笑い待ちや反論のための間を非常に贅沢に使っているのが特徴的であり、見る人に感情輸入を煽りやすくなっていると思います。
〈笑いポイント一覧〉
ボクはね、全然素敵やとは思わないですね。(①15秒)
導入で「結婚式を抜け出す」という話題に対して否定的という開口一番のボケ。
この時点でネタの導入を否定するってのが、スカしっぽく思えてしまいます。
また、こういう初っ端での対立構造ってのは、ザマンザイで披露した「頑張っていきましょう」のネタのような、本来やるべきコントインや話をすることなく、本筋とは別で始まるメタ漫才を想定しがちです。(アルピーの忍者とかそんな感じ)
しかし、対立構造を維持しながら話は進めていくのがこのネタの特徴。
どちらかというとブラマヨのような喧嘩漫才に近い構図の喧嘩コント漫才であると言えますね。(対立ベースのコント漫才といえば、さらば青春の光が敗者復活戦で披露した「娘さんをください」もあります)
キツいキツい、引く引く。(②20秒)
言い方という小技でテンポよくボケます。
ここでひと笑いは挟んどかないと、序盤に結構間延びした印象を与える可能性がありますからね。
というか、言い方や表情などでの小技ボケを挟むことにより、ただでさえ嫌味なネタにポップ感を与えているのでしょう。
滅茶苦茶迷惑かけてきてるやん。(③43秒)
そして30秒程度でコントイン。
「〜って言われたら嬉しないか?」という素での質問に対し、演技の役柄で返答するというのがやや変則的。
川西も演技で返答されたら思わず演技で返すという漫才の暗黙のルールを使ってるってのがちょっとメタ的ではありますね。
「びっくりしたなあ」で相手に一瞬期待させ、一拍間を置いてからの「滅茶苦茶迷惑かけてきてるやん」で丁寧にボディーブロー。
それに対する川西の演技もまさに「…!?」というマークが見えるようで非常に素晴らしいです笑
ここに来てる事、彼のせいにしようとしてない?(④55秒)
女側はあくまでも「彼氏も行けよって言ってくれたから来れた」と主張し、反論を交わします。
こういう時系列遡れるような言い訳はあくまでも、川西が反論を避けようと設定を自ら作り出しているだけなのがポイントです。
川西が女性として発言する前にかなりの長さの思考タイムがあるのですが、あそこで熟考しているのは、彼女ではなく役柄を降りている状態の川西だと考えると整合性がとれます。
しかし、その言い訳虚しく速攻で論破されていく様が面白い。
ここでこの漫才が論破システムで出来上がっていることをお客さんに了解させます。
引く引く、引いてる引いてる。(⑤1分)
淡々と放つ引く引く発言という言い回しでのボケ。
先ほどのボケに被せてきて、老獪に笑いを取っていきます。
じゃあ、結婚式出たらアカンやん。(⑥1分12秒)
そして再度長いシンキングタイム発生。
「彼氏に行けと言われたから来たのではなく、何も言われなくても来た」という最もらしい言い訳をチョイス。
そうするとすぐ反論するのではなく、「元々来てくれるつもりやったん?」と確実な言質をとってからの、正論発動。
こういう細かい嫌味な論破テクニックが上手いですよねえ笑
なんやったらそのウエディングドレス選んでる時も、
「ねえねえ!私このドレスがいーなあ!」って言いながら「私ほんとは当日途中で抜け出すんやけどね」って思ってん?(⑦1分23秒)
そして畳み掛けるように、「ということは最初から抜け出すつもりだったわけ?」と攻め立て、嫌なところをついてきます。
このセリフ内の想像上の彼女演技のディティールが丁寧であり、普段の淡々と真顔でまくし立てる様子との対比が光ります。
抜け出す時の企み顔とか素晴らしい。
「ねえ!ここの式場いいやん!ここに決めよお!」って言ってる時も、「ここやったら抜け出しやすそやなあ…」とか思ってん?(⑧1分28秒)
そして追撃の同シリーズ二発目。
和牛のこのネタの特徴としては、一つの言い訳に対して水田の屁理屈ボケが複数仕込まれており、畳み掛けるようになっているのが特徴的です。
こう何個も思いつくってことは水田は本当にこういう奴なんでしょう笑
こちらの企み顔と演技も先ほどより大げさになっていて、がっちり流れで笑いを取ってます。
彼女もここら辺から追撃を重ねられ、動揺から若干の怒りにシフトしていってます。
そんなあっさり言うて来たの?引く引く。(⑨1分40秒)
そして流れるように、「じゃあ向こうの彼氏に悪いと思ったの?」と再び言質を取り、「どんな感じできたん?」と追い詰めると、あっさり回答。
それに対してこのセリフ。
「引く引く」を再度かぶせてきて、笑いのテンポを落とさないように工夫しているのが伺えます。
そして、「実際の間で見せろ」と再現に入ります。
コントの中でコント(厳密には再現ですが)に入るという入れ子構造が一瞬、見る側としては「どういうこと?」って感じでヒヤッとしそう。
OK。その感じで来たのね。(⑩2分1秒)
過剰なまでの再現演技でもはやボケにしか見えず、確実に餌を与えにいってます。
対して、食い気味での「その感じね」というのも、「なぜこの男はそこがそんなに気になるんだよ」という視聴者のツッコミ心を煽ります。
なんというかこのネタは漫才の癖に明確なボケツッコミのやりとりじゃなくて、状況で笑わせるってネタだから解説が非常に描きづらい。
「(溜めるムーブ)…ありがとう!」のここ(溜めるムーブ)で何考えたん?(⑪2分7秒)
そして過剰演技にもちろん水田も引っかかり、お客さんの代弁者のようなツッコミ。
水田が質問→女性が回答→そこに水田が突っかかるというのが基本構造であり、最初の方は、女性の回答に「なんでここに突っかかるんだよ」という「突っかかるポイントが屁理屈すぎてボケになる」という種類の笑いですが、ここからはちゃんと正しいツッコミをして純粋な種類の笑いにシフトチェンジしていってます。
それと同時に顔の過剰演技がありますので、同時にボケ要素も存在。
彼女もちゃんと間髪入れずに突っ込んでくれます。
ちょっと似たようなので三四郎のネタがこの要素を含みがちだと思いました。
相田のボケに対して、小宮がツッコむのですが、そのツッコミ方が独特すぎてツッコミ内容は正しいんだけど、同時にボケ要素も含まれている的な。
そして相田はそこに引っかかりを覚えてツッコミ返すけど、小宮はさらに反論し、そこはボケツッコミの構図が逆転という感じです。
なんか俺には行く前の助走つけたようにしか見えんかったんやけど。(⑫2分11秒)
そしてたとえツッコミで二個目を老獪に取りにかかります。
水田は役割としてはボケなんですが、ここは純粋なツッコミとして笑いを取る。
彼女はもちろん自分がボケではなく、天然でその行動をやっちゃってるのでツッコミ返します。
そして彼女の怒りのボルテージもさらに上がり、「水田くんと結婚したいからここきたんやで!?」と純粋な気持ちを再確認させます。
この彼女の怒りというのは同時に素の川西の怒りでもあるので、もう当初の「素敵、素敵じゃない論争」は怒りで忘れ去られてしまってます。
中の人である川西はどうにかして水田を論破したい、納得させたい!という方向性へギアをチェンジ。
でも、そんなん言われても正直疑ってまうんよね。
「俺ん時の式もまた抜け出すんちゃうかな」って。(⑬2分23秒)
ここらあたりから正義が完全に彼氏の方に移ります。
これまでは、「まあ正論だけど無粋なこというなよ」的な水田の屁理屈だったのですが、彼女側が怒りに任せた発言になってきたので、これまでの積み重ねもあって、まさに「論破」という笑い。
何て言うて戻るん?(⑭2分31秒)
そして、完全に決裂。
彼女は「もう戻る」と言い出して墓穴を掘ります。
彼氏に振り向いて欲しい女性らしい発想といいますか。
論理的思考vs感情的思考の対決というフェーズへ。
…いや、言っとくけど式抜け出すより、戻る方が大変やで?(⑮2分36秒)
ここら辺は畳み掛けますね。
彼女の方も「やられた」という感じの諦めの表情が上手い。
…「戻ってきたー!?」ってなるもん。(⑯2分40秒)
そして追い討ちの3発目。
水田も自分側の正義を堪能しまくってテンション上がりまくってます。
そして、正義を露骨に振りかざし、「向こうに断られる可能性もあんで?」と相手を
諭し始めます。
もうイニシアチブを取ったので逆にちょっと暴走気味というか感情を露骨に逆撫でし始めるのもこっからです。
だって、一回誓って裏切った奴がまた来んねんから。(⑰2分52秒)
彼女も「ちゃんと謝ってもう一回やり直す」と暴走。
川西としてもただこの喧嘩に勝ちたい一心でそんな無茶苦茶なことを言っちゃうんですよねえ。
んで、女性という役割を演じる以上、こうあべこべな理論へ飛躍。
というか(この漫才における)素の川西自身も「結婚式抜け出すのは素敵」と言ってるので、女性的な要素が大きいような気がします。
そして、水田も「やり直すってどっからやり直すん?誓いのところからやり直すん?」と露骨に状況を指定し、「誓い」「裏切り」という対比でボケの強度を強めます。
…「ヤッパリ、チカイマスカ?」って。(⑱2分56秒)
やはり毎回畳み掛けます。
神父が外人というあるあるに加え、外人にこういうセリフを重ねるというミスマッチさが逆撫で感を強めます。
この時に上戸彩抜かれるんですけど、その笑顔が最高笑
「Oh…Deja vu…」(⑲3分3秒)
こう言われる可能性あるけどどうする?と自らの発言に非があることを認めろと言わんばかりに諭します。
しかし、彼女は「それでも誓うよ!」と墓穴を再び。
それに対して、外人神父という設定を生かし「デジャブ」と母国語で重ねる。
やっぱり一個目のボケの設定を生かして、尚且つちゃんと超えてくるってのが決勝上がってくるだけあって徹底してるなと。
「どうしたらいいの?」じゃないくて、どうしたいの?(⑳3分30秒)
そして30秒程度をかけ、今までの論争をおさらいしながらじわじわと彼女を追いついめていき、反論の余地を与えません。
あと、ダイレクトに「そういう浅はかで傲慢な考え方まず直さなアカンで」って言っちゃってるっていうね笑
そうなると、彼女もついに爆発し、「じゃあ、どうしたらいいの?」という墓穴ワードを引き出されてしまいます。
ここがこのネタのハイライトであり、一番取りに行きたい場所であることは間違いないでしょう。
というか水田はこのセリフを言いたいがためにネタ作ったとすら考えられます笑
なんでこんな事なってんの?(㉑3分41秒)
そしてこっから十分に正義を振りかざした水田の暴走がスタート!
彼女は我に帰り、水田の異常性を自覚し始めて、この観客に呼びかけるような素朴なツッコミ。
ここで見る人も視点の切り替えが起きたことでしょう。
…ああ、泣かんといてよ。
好きな人の涙を見るのは辛いから。(㉒3分49秒)
ノンストップでまくしたて続ける水田を無視し、ついには「こんな筈じゃなかった」と泣き始めてしまいます。
個人的には、「どうしたらいいの?じゃなくてどうしたいの?」というボケを生かして、その第二弾で、困ったら泣き始める女に対しての追い討ちDisかと思ってました。
しかし実際はそこまでdisっといて結局見せるのは愛情という狂気!
オチに向けてぶっ壊しにかかります。
ここでお客さんからは「フゥ〜」と声が上がってましたが、それはさすがにリアクション間違いというか本人たちは想定してなかったでしょうねw
このセリフで喜べる人たちって、彼氏にボコボコにされたあとに「でも愛してる」って言われて抱きしめられたら全部許せちゃう人ってことですよ!
まあ、ツンデレと捉えることもできますけど、さすがにこの発言はあんだけ畳み掛けがあるんだから、どう考えても一線超えてる人の合図でしょう。
とは言っても、川西のリアクションがどっちともとれるってのがあるんで露骨に真意に誘導してない気もしますが。
次につなげることもできますし。
じゃあ、なんでそんな言うてくんの…!?(㉓3分59秒)
そして、「勘違いせんといてや、ホンマに好きやねんで。俺、この先の人生で君より好きな女性に出会う事はもう2度とないと思ってるよ」という狂気畳み掛け。
これには彼女も思わずドン引いてツッコミます。
やっぱここは二発目作ることによって、リアクション間違えした人にもしっかりと狂人であることをアピール。
怖い!怖い!怖い!怖い!(㉔4分4秒)
「どうかしてるわ!」と突っ込むと、「どうかしてるのはそっちや」と先ほどの件をもう一度用いながら機械的に淡々と反論。
三段構えでもう露骨に狂気を出しまくりで、彼女からも怖い連呼が飛び出します。
もうここは、ネタをぶっ壊していく段階です。
じゃあ、結婚してあげる!(㉕4分14秒)
そして、彼女は自分の過ちをここでやっと認め、川西自身も負けを認めます。
もう論争関係なしに暴走を止めるための措置でしょう。
そしてオチにこのセリフ。
積み上げて積み上げてこのセリフだけが川西にとっての露骨なボケであり、ようやく素でツッコみ、コントから降り、そのまま漫才終了となります。
しかし、「できるかあ!もうええわ」のカッコつけ感が異常。
関西の漫才師はフット後藤を筆頭に露骨にここで決めにかかりますよねw
解体してみると、水田の役割が、屁理屈難癖付ける人→ド正論を吐く人→愛ゆえの狂人という三つのフェーズに変化していってるのが分かります。
観る人にもその視点と役割の切り替えを感じさせるのが上手いなあと思いました。
屁理屈漫才と言いながらもその要素一本ではなく、演技の小技で笑わせたり、屁理屈からだんだんとシフトさせていく様が流石の一言に尽きます。
あと、役柄を演じながらも、下地となる素の人格が介在するというメタ的な部分が多いので非常に入り組んでいて、分析しようとするとちょっと考えすぎて、こんがらがってしまいます。
芸人ってこういう漫才ルールを意識してネタ作ってんだなあと改めて実感。
それと同時に、漫才なんて頭からっぽにして観るのがどんだけ楽しいことかと笑
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〈スーパーマラドーナ 落ち武者〉
武智正剛:どうもー、スーパーマラドーナです。おねがいしますー。
ねぇ、僕が武智といいましてねえ、こっちの暗そうな弱そうな頼んないねえ、
生きてんのか死んでんのかようわからんようなヤツがね、田中と言いましてね、おねがいしますねえ。
田中一彦:「おい、みんな!好きなもん同士でグループになれ!」
武智:何やねん。
田中:この言葉がトラウマです( ①14秒)
武智:知らんがな!
お前の学生時代の過去知らんがな、アホンダラぁ。
田中:すいませぇん
武智:やってますげどねえ。
田中:いやー、僕ねえ。
この前、血まみれの落ち武者の霊見たんですよ。
武智:血まみれの落ち武者の霊?
めっちゃ怖いやんけ。
田中:あるマンションに行った時、見てしまったんです。
武智:あるマンションに行った時?
田中:ピンポーン(コントイン)
武智:これ再現してくれてるみたいですね。
田中:ガチャ。
「どうもぉ」
「アヤちゃん。あっ、ユリちゃんどうも!」(②36秒)
武智:いきなり失礼やお前。
女の子の名前間違えんな。
田中:「どうぞ、上がってください」
武智:女の子の家みたいですねえ。
田中:「この前の飲み会以来やねえ」
武智:飲み会で知り合ったんですねえ。
田中:「あー、女の子の部屋初めてやわあ」
武智:あ、そう。
田中:「私も誰か上げるの初めてです。でも初めてが田中さんでよかった!」
武智:ええ?なんかいい感じですねえ。
田中:(女の尻をソフトタッチ)
「え?」
「あ、ゴメンゴメン。お尻触っていいんかなあって思って」(③57秒)
武智:ええワケないやろ、お前!
なんで向こう気ぃあるなと思たらお尻触ってええねん。
そんなんやから学生時代いじめられんねん、お前は。
田中:「田中さんってお笑いのお仕事されてましたよね。具体的にどんなことを?」
武智:あっ、気になるんですねえ。
田中:「あの、『なんでやねん』とか『逆や』とか言うてたら、お金が入ってくるみたいです」(④1分11秒)
武智:ナメんなよ!お前!
芸人全員でシバいたろか、お前は。
田中:「あと、『そんな事したら奥歯にウンコついてまうやろ』とか」(⑤1分18秒)
武智:いつ使うねんその言葉!
何やねん、奥歯にウンコって汚いなあ、もう!お前は…
田中:「そうなんですね…」
武智:引いてるやないか、女の子。(⑥1分26秒)
田中:「さっきスーパーに買い物に行ったんで、何か作りますね」
武智:手料理ねぇ!
田中:「大丈夫?俺、料理界の川越シェフって言われてんねんで?」(⑦1分31秒)
武智:料理界の川越シェフは、川越シェフや!
何言うてんの。
田中:トントントントン…(野菜切る音)
武智:てか、落ち武者の話どこいったん?(⑧1分38秒)
落ち武者待ってんねんけど、俺。
田中:「あの、アヤちゃん。あっ、ユリちゃんってさあ…」 (⑨1分42秒)
武智:それヤメろ言うてんねん!
失礼やで!だからもう。
田中:「一人暮らししてるけど両親は何処に住んでんの?」
武智:ご両親ね。
田中:「両親は、私が小さい頃に亡くなりました」
武智:あら…
田中:「その…病気で?」
「いえ。交通事故です」
武智:そっか…
田中:「あぁ…二人、とも?」
「はい…二人とも…」
「即死…やったん?」(⑩2分5秒)
武智:もうヤメたれや!オイ!
「即死やったん?」ってどんな質問やねん!
失礼にもほどがあるやろ、お前はもう!
田中:「だから私、決めたんです。両親の分まで精一杯生きよって!」
武智:偉い!
田中:「もう、出来たら早よ作って!」(⑪2分17秒)
武智:死ねやお前もう!
お前、人の気持ちとか判らんのかマジでもう。腹立つう…
田中:トントントントントントン …(野菜切る音)
武智:何やねんコイツ。
田中:(何か閃く)
武智:何やねん?
田中:(引き出しを開ける)
武智:引き出しとか勝手に開けんなよ?
田中:(パンティーを取り出し、匂いを嗅ぐ)
武智:パンティー?
田中:(それを被る)
武智:被んなよ、オイ!
田中:「ねえねえ!」
「やめて下さい!」
「…ゴメン」(首かしげる)(⑫2分35秒)
武智:…どうなる予定やったん!?
お前の中ではこれ、最終これどうなる予定やったん!?なあ?
田中:「出来ました。肉じゃがです」
武智:出来たんかよ。
田中:「わあ、美味しそぉぉぉ〜ウィ!!」(⑬2分50秒)
武智:情緒不安定かお前、オイ!
怖すぎんねん、さっきからもう…
田中:「ありがとう。…あっ、 手ごめん」
「あっ、いえ」
武智:え?手ェ触れたみたい。
田中:「あの、あの時の返事、まだ聞いてないねんけど?」
武智:ええ!?
田中:「即死やったかどうか」(⑭3分2秒)
武智:それいらんねん!だからもう!
即死かどうか聞いて、どうしたいねんお前は、もう!
田中:「っていうか、田中さんって向井理さんに似てますよねえ!」(⑮3分9秒)
武智:目、腐ってんのかコイツ!
田中:「そういうあなたも、香川照之さんに似てますね!」(⑯3分14秒)
武智:ちょっとお前!ヤメたれや、もう!
男でもあんまおらん顔やぞ!
似てても絶対言うなアホ!お前は!
田中:「可愛いワンちゃんの写真!」
武智:えぇ?
田中:「ペロっていうんですけど、一ヶ月前に病気で死んじゃって…」
武智:ハァ…
田中:「もう、さっきから死んでばっかりやん!w」(⑰3分29秒)
武智:(絶句)
田中:(食事しながら)
「…もう、ボケなんやから笑ってぇやん!」(⑱3分33秒)
武智:笑えるか!アホ!
お前、頭おかしいんか!?
自分が何言うてんかわかってんのか!?
田中:「照之さん、あっユリちゃん」(⑲3分39秒)
武智:香川やないかい!!
香川はええねん!
てか、何の話してんねんさっきから!
最初、こんな話違うかったやろオイ、なあ!?
田中:ピーンポーン
「ユリー!」
武智:えぇ?
田中:「彼氏が急に来ちゃった!」
武智:彼氏!?
田中:「早く隠れて!」
武智:とんでもない女やった、オイ!
田中:ガチャ。
「ここに荷物一杯やな…」
武智:早よ隠れな、お前!
田中:ガチャ。
「ここも一杯でござる」(⑳3分52秒)
「すいません」
ガチャ。(閉める音)
武智:今の落ち武者や!オイ!!
出た出た出た!!
落ち武者出たって!
出た出た、オイ!
田中:ガチャ。
「うわ!彼氏や!」
武智:玄関開けてどうすんねん、オイ。
彼氏に姿見られてもうたやないか。
田中:ドン(ドア蹴る)
「誰やお前!ケツから手ェ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろか!」
武智:怒ってる…
田中:「へえ?ケツから手ェ突っ込んで奥歯…?いやそんな事したら、奥歯にウンコついてまうやろ!」(㉑4分9秒)
武智:さっきのツッコミやないかい!オイ!!
使える場所あったんかいコレ、オイ!?
田中:(被っていたパンティを脱ぐ)(㉒4分 15秒)
武智:…ずっとパンティ被ってた!
コイツ、途中から今まで、ずっとパンティ被ってた!
田中:そうなんですよ、ずっとパンティ被ってたん…(㉓4分22秒)
武智:急に喋ってくんな!
もうええわ。どうもありがとうございました。(4分26秒、笑いポイント23個)
〈全体の分析〉
266秒と持ち時間ギリギリで笑いポイントとしては23個と手数自体は前2組と比べてちょっと少ないのが特徴です。(メイプルは230秒で23個、馬鹿よは260秒で28個)
とは言っても、ストーリーに入り込み、その中の流れで笑いをとろうとしていたので、手数に関してはこれぐらいでも妥当でしょう。
一応、コント漫才の形式の形式をとっており、その中でも、ボケの田中が体験談を落語風会話スタイルで回顧するというのがやや変則的。
ツッコミはひたすら実況解説的にツッコみ、話の流れをいちいち止めたり、確認をとったりしないのがこの漫才のミソであり、コント漫才にありがちなストーリーを止めて、仕切り直すという時間の無駄を省いているのが特徴的です。
同時にボケも、ツッコミに反応することなく淡々と話を進めており、まあ、過去の話なので、いちいち突っ込まれてもストーリー改変できないという説得性を持っています。
スーパーマラドーナの特徴としては、どう見てもヤンキーいじめっ子の武智とどう見ても貧弱いじめられっ子田中の対比というのがあります。
露骨に両極端すぎるため、見る人によっては、武智の単なるツッコミが、本人の口の悪さも加えて、暴力性溢れてしまいどう考えても、いじめの構図に見えてしまうのが懸念材料としてあります。
それを意識してか、直接は会話をしないというスタイルにたどり着いたのではないかと個人的には判断しています。
さらには、コント中の田中のキャラを失礼クズに仕立て上げることにより、武智の暴力的なツッコミの強さに正当性を確保しているのも見事。
持ち味ゆえに生み出されてしまう歪みを見事、独自スタイルとしてネタ内でも消化し、比較的見る人を選ばない構図を生み出しています。
しかし、掴みの武智による田中への紹介や、「だからいじめられるんや」みたいなのはやはりまだ直接的であり、もっと間接的にやってもいいのでは?と感じてしまいました。
ただ、やや乱暴ではありますが、「どう見てもいじめられっ子」という印象をフリとして直接的に固定化し、そのイメージからのズレで「そういう奴は実は狂ってる」というボケを鮮やかに見せるため、とも解釈できるでしょう。
この漫才のキモはやはり終盤にある怒涛の伏線回収にであり、いかにもM-1を獲りに来たらしい、4分間における作品性の高さはこの漫才がトップではないかなと感じさせられました。
おそらく台本-1グランプリなら優勝でしょう笑
落ち武者の話、奥歯ウンコ、パンティ被りという三要素が効果的に発揮され、 その伏線の仕込み方もストーリー的にも自然に組み込まれているのがお見事。
最終的には、漫才なのに掛け合いをしないというスタイルすらオチとして作用させ、自然に閉じる印象を与えています。
そして、ボケ方も役割に入り込んでいますが、あのみてくれの田中が淡々と失礼ボケをかますというギャップが非常にマッチしていると感じます。
また、ツッコミも顔の演技やフリの段階では話を柔らかい口調で咀嚼説明し、ボケたら間髪入れず怒鳴りツッコミというメリハリがついていて非常に丁寧。
ちゃんと客の方を向いて漫才するという意味では、劇場を持ちたくさん漫才をする機会のある吉本の芸人はやっぱりそこらへんの意識が違うなーと思わされました。
〈笑いポイント一覧〉
この言葉がトラウマです( ①14秒)
毎回やってる定番の掴みですね。
まあ、掴みなんで「好きなもん同士でグループになれ」というあるあるネタ。
ただ、M-1の舞台ならばもうちょっと捻ってもいいような気がします。
安直すぎるというか笑(安直だから掴みなんですけどね)
「アヤちゃん。あっ、ユリちゃんどうも!」(②36秒)
ササッと導入を済ませ、無駄のないコントイン。
武智がすかさず田中の言ったことを繰り返し、コントインした状況を説明するという丁寧さがいいです。
そっからの今後のキャラクター性を表すような失礼ボケ。
「いきなり失礼やな」というツッコミフレーズからも、印象づけに用意周到。
このボケは何度も重ねられるので、忘れた頃に使うと非常に便利。
(女の尻をソフトタッチ)
「え?」
「あ、ゴメンゴメン。お尻触っていいんかなあって思って」(③57秒)
20秒程度をかけてからのサイコ寄りの失礼ボケを重ねます。
この時点ではどこに落ち武者が出てくるのか気になるため、ストーリーに時間をかけてもいうほど間延び感が出ないのが見事。
ボケる前は必ず武智の合いの手が凄い丁寧に柔らかなのが、ボケのパワーを増強させています。
ただ、ツッコミの「そんなんやからイジメられるねん」というのはひねりがないというか。
そんなん言うまでもなく見た目で分かっちゃうんですから、例えとかで一捻り欲しかった気がします。
ネタは繊細なのに、こういうとこはガサツ笑
「あの、『なんでやねん』とか『逆や』とか言うてたら、お金が入ってくるみたいです」(④1分11秒)
少し方向性の違うボケをここで仕込みます。
というか、その次の伏線としてのボケを伏線として気付かせないための工夫ですね。
木は森に隠す的な。
「あと、『そんな事したら奥歯にウンコついてまうやろ』とか」(⑤1分18秒)
そして被せの二発目兼伏線ボケ。
単純に一発目にこのボケをやっちゃったら露骨過ぎるので、二発目のないないネタのボケとしてカモフラージュ偽装。
ただ、この時点で落ち武者の話と言いながら、落ち武者のおの字すら出てきてないため、後半作用するのでは?と色々疑いながら見てる人は、このボケも少々無理やりというかひっかかる要素であったと思います。
また、武智のツッコミがちゃんと「奥歯にウンコ」を反芻してるのが、なんとも印象付けのためというか、書き起こすと案外大胆で露骨笑
引いてるやないか、女の子。(⑥1分26秒)
落語スタイルなので情景が浮かび辛くても、武智の自信に満ち溢れるツッコミが登場人物の状況を断定してくれるのでいいですよね。
彼が目となって、情景描写の補強をゴリゴリに行ってくれます。
「大丈夫?俺、料理界の川越シェフって言われてんねんで?」(⑦1分31秒)
ストーリーは女が料理を振る舞うことへと進行。
考えボケまでとも言わないまでも、ちょっと方向性の違うベタなボケ。
武智のツッコミが「料理界の川越シェフは、」でお客さんの方を向き、指摘ポイントを仰ぎ、そっから一拍開け、「川越シェフや」で田中の方を見て突っ込むなど丁寧さがあります。
てか、落ち武者の話どこいったん?(⑧1分38秒)
そして、コントインしてからちょうど一分経過したあたりで、落ち武者の話へのツッコミ。
あくまでも落ち武者の話であるという補強と、集中できなかった人への配慮。
まあ、こういうツッコミされると「結局、出てこない」パターンか「最後にチョロっと出てくる」パターンの二つに絞られます。
「あの、アヤちゃん。あっ、ユリちゃんってさあ…」 (⑨1分42秒)
そして一分ぶりの天丼。
やはり、人間の心理的に天丼は一分程度間を空けるのが一番効果的なんでしょうか。
こういうの誰か研究して欲しいです。
あと、ネタ中でこの手のボケ以外で「ユリちゃん」と一切呼んでいないところにもディティールとしてこだわっています。
このネタにはミステリ作品を読んでるみたいな繊細さがあります。
「あぁ…二人、とも?」
「はい…二人とも…」
「即死、やったん?」(⑩2分5秒)
そして、失礼キャラを生かすのには絶好のやり方、不謹慎ボケが発動。
20秒程度かけ、丁寧にシリアスな雰囲気を作り出す。
そして、「二人とも?」のことでじわじわ失礼を見る人の脳裏に思い浮かべさせ、「即死」というど直球を引き出したところで、代弁するかのようなツッコミ!
ここがハマれば、このネタは獲ったも同然です。
「もう、出来たら早よ作って!」(⑪2分17秒)
そして、それに彼女は激情することなく、未来へ希望を持ち始めます。
しかし、そっからの重ねでさらなる失礼ボケ連続。
武智の「偉い!」というあざといまでもの感情の方向転換が、それを逆撫でする田中のボケを効果的に演出しています。
そして、本来の彼らの問題であった武智の暴力的なツッコミ、ここでのワードは「死ねや!」というものですが、それに完全に正当性が確保!
まあ、これは誰でも死ねや!と思いますが笑
「ねえねえ!」
「やめて下さい!」
「…ゴメン」(首かしげる)(⑫2分35秒)
そして続けざまに、伏線としてのパンティ登場。
単体のボケとしても丁寧ですが、伏線としての印象付けのために、パンティを被るディティールもかなりゆっくりと分かりやすくしています。
首をかしげるという失礼キャラというかもはや、アスペ確定まで到達していますが、「…どうなる予定やったん!」 という一拍おくツッコミがこれまた見事。
会場の笑いが尾を引き、さらに溜めてから反復ツッコミでがっちり確保!
即死とパンティ二連発でもうハート掴みまくりです。
ただ、あんだけしっかりと被るマイムをしていたのに、脱ぎ去るというマイムをしていない時点で、被りっぱなしというのに気づいていた人も多かったのではないかと思います。
個人的には、そのあとの料理食べる件でパンツが邪魔で食べれないというボケに繋げるのかなーと思ってました。
「わあ、美味しそぉぉぉ〜ウィ!!」(⑬2分50秒)
そしてここでも別の方向性のボケを持って行き、もう田中が異常者であることを周知。
こういう失礼の積み重ねがあるからこそ、唐突な絶叫ボケというのは面白く作用するのです。
ここから、武智の態度も少し田中に引き気味なのが特徴的。
というか田中のパーソナルな部分のヤバさに気を取られ、落ち武者やパンティのことを完全に忘れてしまったという設定ですかね。
同時に観客にもそこを忘れさせるという代弁者・武智の上手さが光ります。
「即死やったかどうか」(⑭3分2秒)
そして、ストーリーを進行させ、手を触れるからの、あの時の返事という件へ。
武智もこういうボケの前は露骨に感情を切り替え、嬉しそうな「え!」を発しているのが白々しくて面白い笑
そこからちょうど一分のタイムラグを持ってからの、「即死」被せ。
やはり、忘れた頃に天丼をかますのに60秒が効果的と気づいてるんでしょうか。
即死確認の異常性がいいですよね笑
「っていうか、田中さんって向井理さんに似てますよねえ!」(⑮3分9秒)
そして三分経過したところでようやく女性側からのボケ。
女性側はボケないというルールを利用した個人的に大好きな件です。
方向性も別のところですし、武智の「目腐っとんのか」という投げやりな見離すようなツッコミが、見るものに「結局、両方バカなんだ」というあんだけ失礼な言動をされた彼女の心情への心配を払拭させる作用があります。
「そういうあなたも、香川照之さんに似てますね!」(⑯3分14秒)
からの舵戻し的な失礼ボケ。
実は予選では終盤の件の半沢直樹の土下座というものが組み込まれていたので、それの名残なんです。
決勝ではそこをマイナーチェンジしています。
しかし、芸能人大喜利として「女性に香川照之の顔」というのはある種正解。
「もう、さっきから死んでばっかりやん!w」(⑰3分29秒)
そして、30秒程度経過してからの死亡ネタ再び。
もうネタフリの時点でニヤニヤが止まりません笑
田中のボケ方も「笑顔」という異常性表現としてもさらに強まってるのがいいですね。
極め付きには、武智がツッコミにおいて何も発さず顔の演技だけで爆笑をもぎ取る!
完全にお客さん掴みきってます。
そしてボケる前にはちゃんと一旦、落ち込むという演技も忘れません。
(食事しながら)
「…もう、ボケなんやから笑ってぇやん!」(⑱3分33秒)
そして、畳み掛ける!
笑顔だけでなく、「飯食いながら」という異常性ディティールもこだわってます!
ツッコミも、絶句を通り越し、終盤に向けてボルテージがどんどん上昇してくるのも特徴。
「照之さん、あっユリちゃん」(⑲3分39秒)
名前間違え三発目。
次は約2分ぶりなので、天丼三発目は「2発目で一分待ったら次は2分待つ」というルールすら感じさせられますね。
安易にそのまんま繰り返すのではなく、ちゃんと先の香川照之を生かしています。 (先の香川からは25秒程度)
しかし、ここの「香川やないかい!」っていうツッコミの語感の良さが最高ですね。
名倉やないかい的な。
ツッコミにおいては関西弁に勝る言語はないと思わされてしまいます。
そして、再度武智が落ち武者というワードを隠しながら「最初、こんな話やなかったやろ!」というツッコミを発動させ、落ち武者パートへ備えさせます!
ガチャ。
「ここも一杯でござる」(ゼニ(⑳3分52秒)
「すいません」
ガチャ。(閉める音)
怒涛の伏線回収一発目。
まあ、ここは正直、落ち武者落ち武者散々フッていたので気付かれるのは混みでしょう。
気づいた人には「結局このネタのキモはこれでしょ?」と思わしといての、次の2発目、3発目が続きますので、逆に裏切りの笑いとしてはここで気付かせた方が効果的。
まあ、そうじゃないとしても、彼氏登場という緊急事態からのスピード感や、物語への食いつかせ感で丁寧に伏線を消化させようとしているのは確かです。
でも、一旦隠れ場所を間違えるのは見え見えすぎというかねえ。
とは言いつつも、効果的に作用し、拍手笑いをもぎ取ります!
というか冷静に見返してみると、落ち武者の演技ってあれで正解なの?w
「へえ?ケツから手ェ突っ込んで奥歯…?いやそんな事したら、奥歯にウンコついてまうやろ!」(㉑4分9秒)
彼氏対面からの「ケツから手ェ〜」の伏線回収へ向かいます。
武智による「彼氏登場からの姿見られた」という状況説明が丁寧!
また、「怒ってるぅ…」という演技をして、一旦そっちに気を引かせてるのが流石だなと。
約3分のラグがあるため、これは流石に効果的でしょう。
それもあってかこっちの方が拍手自体は強め!
(パンティを脱ぐ)(㉒4分15秒)
そして怒涛の三発目でパンティ回収。
こちらは1分40秒ぶりの登場。
素晴らしいんですが、意表を突く度としては奥歯ウンコをちょっと下回る。
しかし、怒涛の三連発というのが既にそういうのを気にさせないレベルまでボケを到達させてることには間違いないでしょう!
そうなんですよ、ずっとパンティ被ってたん…(㉓4分22秒)
オチは急に話しかけてくるという、やや変則的なコント漫才へのメタツッコミ。
こういうボケは大体、道中に挟んでくることが多いんですが、最後の最後にやるってのがオチとしてちょっとオシャレ笑
見返してみて気づいたんでけど、この漫才において武智はツッコミの際に田中に対して、ほとんど手を出していないんですよね。
即死被せの時に頭1発、香川の件で「やめたれや!」というセリフと共に、腕をはたくというジャブ感溢れるツッコミ2発という具合でして、やっぱり意図的に暴力的なイメージを避けようとしてたんだなと思わされてしまいます。
なので、この最後の顔面ビンタは我慢した末に発散され、より効果的に映ります。
このネタも解体しがいがありますね。
天丼や伏線回収までの時間がどのぐらいのタイムラグあると効果的に見えるのかや、伏線を張る時の工夫や印象付けのための露骨な反復など、漫才に限らず、文芸作品における構成で魅せる作品の効果的な作り方の参考になるのではないかと思いました。
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〈馬鹿よ貴方は おにぎり屋〉
新道竜巳:どうも、馬鹿よ貴方はと申します
名前もね、覚えて帰っていただければと思います。
僕がね、新道竜巳という名前でやっております。宜しくお願いします。
平井ファラオ光:…くまモンです。(①10秒)
新道:いつからだよ!
あの、平井ファラオ光という名前ですのでよかったら覚えてください。
ファ:最近、ゆるキャラが好きでな。
新道:本当かよ。
ファ:UFOキャッチャーでゆるキャラ眺めて1日過ぎたりしてんだよな。(②22秒)
新道:他のやることなかったの!?
ファ:お前、脳みそ直で見たことあるか?(③25秒)
新道:なんの話だよ!もう…
ファ:こん中で脳みそを直に見たことあるって人(挙手求める)
(三秒空白)…まだ客が重いな(④33秒)
新道:本当になん〆☆※!仮に挙げられてもこまるでしょうがよ!
ファ:今日は実際の脳みそのグロさ、脳死までのメカニズムを伝えようと思います。(⑤40秒)
新道:あの…、今日のネタおにぎり屋さんです。これ関係ないんでね!(⑥45秒)
一回リセットしていただいて!
僕、おにぎり屋さんの店員やるんで、ちょっと、お客さんやってください。お願いします。
(コントイン)(⑦51秒)
ファ:ウィィィィィィィー、…開くの遅えなあ!(⑧58秒)
新道:お前次第だろう!早く入ってきなさいよ。
ファ:オイ。
新道:え?
ファ:顔をひし形にしてやろうか?(⑨1分3秒)
新道:な、なんでそんなこと言うんだよ、オイ!
ファ:ウィーン
新道:いらっしゃいませ。
ファ:ウィーン(閉まる)(⑩1分12秒)
新道:アレ?
ファ:… ブウーン(ドップラー効果)(⑪1分14秒)
新道:透き通らなくていいから!
(仕切り直して)いらっしゃいませ!
ファ:イラッシャイマセ!(オウム返し)
新道:なんにしましょう?
ファ:ナンニシマショウ?
新道:お客さんですよね?
ファ:オキャクサンデスヨネ?
新道:真似しないでもらえますか?
ファ:マネシナイデモラエマスカ?
新道:…僕は負け組です。
ファ:その通り。(⑫1分32秒)
新道:何なんだよ!
ちゅ、注文しろよ!
ファ:顔をひし形にしてやろうか?(⑭1分39秒)
新道:何回言うんだよ!
ファ:三回だよ。(⑮1分41秒)
新道:あと一回言うのかよ!
ファ:お楽しみに。(⑯1分45秒)
新道:お楽しみにじゃないよ!こんな簡単なこともやれないの?
ファ: …え?
新道:こんな簡単なこともやれないの?
ファ:レーレレ レレレレ レーレレ レレレレ レレレレ レレレレ ヤルヤルゥ♫(⑰1分56秒)
新道:何の音楽だよ!
注文しろよ!
ファ:「私はきったないおにぎり屋さんだ」と言ってみろ。(⑱2分2秒)
新道:注文しろよ!
ファ:いいから。
「私はきったないおにぎり屋です」
新道:…私はきったないおにぎり屋です
ファ:「きったない私は偽善者でもあるので生きる資格がありません」
新道:…きったない私は偽善者でもあるので生きる資格がありません
ファ:「これから私は店を畳んで死に場所を探します」
新道:…これから私は店を畳んで死に場所を探します
ファ:…なんか今日は楽しいなw(⑲2分27秒)
新道:お前だけ!こっちは全然楽しくないんだよ!
最近いいことないんだよ。
親友だと思ってる奴がさ、結婚式誘ってくれなかったし、いいこと全然ないんだよ!
ファ:…俺、親友だと思ってた奴に誰ですか?って言われた。(⑳2分39秒)
新道:超えてこなくていいから!注文しろよ、注文!
ファ:梅おにぎりと、あと挫折のお茶ありますか?
新道:挫折のお茶?
ファ:メーカーが色々試行錯誤した結果、お湯です。(㉑2分49秒)
新道:挫折しなくていいから!
あのさ、あの、ふつうの梅おにぎり300円なんですけど。
ファ:(腰まわりを探る)あれ…?さっきまであったのにな…?…すいません。
新道:ハイ?
ファ:腰骨がないんですけど。(㉒3分6秒)
新道:ありますよ!何言ってんすか!
…あの、お金くださいよ、300円。
ファ:じゃあ、一万円で。
新道:はいはい。
ファ:お釣り多めにもらえますか?(㉓3分14秒)
新道:あげれる訳ないだろ!なんで!
(3秒沈黙 )…客もろくにできないのなら、今後の人生大丈夫?
ファ:大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫だよ!大丈夫。大丈夫だよ!大丈夫。大丈夫だよぉ、大丈夫。
大丈夫なの?大丈夫だよ。大丈夫かぁ?大丈夫だぁ。大丈夫なの?大丈夫だよ。
大丈夫なのか?大丈夫だよ。大丈夫なんですか?大丈夫だよ。大丈夫ですかねぇ?大丈夫ですよ!
大丈夫かぁ?大丈夫だよ!大丈夫なの?大丈夫かぁ!?大丈夫だぁ!大丈夫ですよぉ!大丈夫なのかねぇ?
大丈夫だよぉ!大丈夫なの?大丈夫だよ!大丈夫だろ?大丈夫か?大丈夫なの?大丈夫かぁ?
大丈夫ですかー?大丈夫だよお!大丈夫なのぉ?大丈夫?大丈夫…大丈夫…(㉔4分5秒 、合計41秒間で40個!狂気!)
…顔をひし形にしてやろうか?(㉕4分8秒)
新道:そこじゃねえだろうがよお!
ファ:顔をひし形にしてやろうか?顔をひし形にしてやろうか!?顔をひし形にしてやろうか !顔を…以下略(㉖4分11秒)
新道:まだ続くのかよ!?
三回じゃなかったのかよ!?(㉗4分11秒)
どうもありがとうございました。(ファ:顔をひし形にしてやろうか㉘)(4分20秒、笑いポイント 28個)
〈全体の分析〉
ゆったり目のネタかと思いきや、意外にも笑いポイントは28個とメイプル超合金よりも手数に関しては上なのが特徴的です。
まあ、ファラオは全言動がボケかボケのための言動なので会話をしない分、手数が増えるのは必然とも言えましょう。
また、それゆえに笑顔などの根源的な感情表現すら意外性からのボケに見えるという強みを持っており、初見でのインパクトは残しやすいキャラクターであると感じます。
質問する、客席に話しかける、歌う、はにかむという行為すら笑いになってしまうという得なキャラクター。
それでもゆっくりに見えるのはやはりボケであるファラオの間の使い方。何かを喋る前には必ずちょっとしたタメを作り、視聴者に一瞬の緊張感を煽らせるのがうまい。
もちろん、そういった間のみではなく、時には食い気味にボケるなど緩急を使い分けるのもよく見られます。
コント漫才という形式をとっており、近年の賞レースではコントインしたらツッコミも役に入り込みスピード感保ちながら、ストーリーを進めて終着点に持っていくという手法が常套手段とされてますが、 このネタに関しては「コントにおけるストーリーを進めない」というのがキーポイントとなっており、ある種、時勢と相反したようなネタであるといえるでしょう。
その証拠におにぎり屋のコントなのに、2分40秒経過してからやっと注文するというペースです。
ストーリーとしては、普段の馬鹿よのネタのように無駄なくコントインするのではなく、テレビお披露目の意味合いもあってか、まさかの自己紹介から入ります。
(まあ、このネタに関しては「コントを進めない人」というタイトルでもあるので、コント外部のやりとりも重要なのですが)
そして、彼ららしくはない客に呼びかけ(内容はブラック笑)などで、ファラオの得体の知れない「らしさ」を周知させたとこで、「おにぎり屋」のコントがスタート。
導入で複数回ボケたり、オウム返しや「顔をひし形にしてやろうか?」等、コント内外問わず終始、ネタを成立させることなく非協調的な態度をとるファラオ。
ついには、一向にコントに入っても話を進めずにいるファラオに対して、新道はどんどんフラストレーションを募らせていき、ついには「こんな簡単なことできなくて大丈夫?」というセリフまで至ります。
そして狂気の「大丈夫」連呼41秒間40連発!でネタをぶっ壊しにかかるまで至りますが、実は「顔をひし形は三回言う」というボケ兼天丼予告を最も効果的に発揮させるためのフリに過ぎないのがお見事。
「賞レースでこんな大胆なことをする」というチャレンジングな奴らに思わせといて、実は、あのボケを効果的に演出するためのものでしたーというネタ製作者・新道のイタズラ心みたいなのが伺えます。
そして、それが終わるとまさかの「顔をひし形にしてやろうか」連呼でダメ押し、そのままネタ終了という裏切りの笑いで締めくくっています。
ツッコミの特徴としてはワードで何か色味をつけるわけではなくひたすらにシンプルなのもポイント。
あのシンプルな白Tという衣装からもわかるように、極力個性を消しているのでしょう。
しかし、それが逆に無個性ゆえの個性が見えるような気がして、阻害要素な気もしてしまいます。(ノームコア的な笑)
また、ツッコミが非常に発声技術的に稚拙にも見え、去年のザマンザイの頃よりは、張りのある怒鳴りツッコミを習得しているなど確実に成長しているように感じるのですが、
やはり、書き起こしのさいに注目していると、どうしても、ツッコんだ時に噛みがちであったり、語尾がうやむやになってしまうのが気になりました。
ファラオを立たせるためのそういうやり口か実際に技術がないのか知りませんが、見る人にとってはやっぱり引っ掛かりがある時点でまだ微妙なのではないでしょうか?
対してボケは発声する前にタメをつくり、語尾までしっかりといい声で発音。
真顔で淡々とボケるというのが非常に似合うキャラクター性もあるため、「次はどうくるんだろう」という期待感すら持ってしまいます。
そして、発声こそアレですが、ツッコミに関してもボケを言い切る直後に間髪入れずツッコむのを徹底してて、やはり、間に関しては相当意識しているんだろうなーと感じさせられます。
彼らは自分たちの面白いことを効果的に発揮するための間を熟知していると感じさせられました。
彼らのボケがフリ目的のボケらしき言動(僕だけがそう受け取ってるだけかもしれませんが)なのか、マジで狙いに行ったボケなのかは、基本的には新道のツッコミタイミングで判断することができます。
間髪入れずにすぐに突っ込んだときはそこで笑わせたいボケ、トンチ系のボケ以外で、ファラオが喋ったあとにツッコミまで一拍あったり、口調の穏やかな返答をしている場合はそこのフレーズは本体ではないことが多いと、今回のネタを見た限りでは思いました。
〈笑いポイント一覧〉
…くまモンです。(①10秒)
つかみはベッタベタなボケ。
ファラオのキャラクターや間で通用するものまで仕上げてきています。
新道の自己紹介が丁寧であり、その対比でシンプルイズベストな回答。
UFOキャッチャーでゆるキャラ眺めて1日過ぎたりしてんだよな。(②22秒)
これもファラオのキャラクター性を紹介するようなものですかね。
突拍子のなさと得体の知れ無さ。
ここは新道のツッコミがまだ弱いのが特徴的。
お前、脳みそ直で見たことあるか?(③25秒)
会場ではややウケで半分引かせ気味になっていたのですが、ここはまあキャラ込みでクスッと笑いぐらいは欲しかったんじゃないでしょうか。
証拠に新道も間を持たさずツッコミ入れてますし。
加えて、ツッコミの強さも「UFOキャッチャー」よりかは一段階強めています。
徐々に強める段階です。
こん中で脳みそを直に見たことあるって人(挙手求める)
(三秒空白)…まだ客が重いな(④33秒)
心配になるほどの静寂を作り出してからの、「そういう算段でした」と安心させるようなボケ。
馬鹿よのネタの特徴として、「これって笑わせようとしてんの?どっち?」と心配させるようなことを発してからの、「んなわけねーだろ」的な正解発表というのが多いと感じました。
「緊張と緩和」という要素への彼らなりの取り組み方ですかね。
前のツッコミに比べ、ここでのツッコミは一番強く置いていますので、ここが本当に取りたかった部分。
「なんの話だよ」から「本当になんの話だよ!」への強化がありますからね。
今日は実際の脳みそのグロさ、脳死までのメカニズムを伝えようと思います。(⑤40秒)
あの…、今日のネタおにぎり屋さんです。これ関係ないんでね!(⑥45秒)
グロさや脳死というワードを出してきてる時点で半分は引かせにかかってると僕は思いますね。
突拍子もないボケともとれますが。
そして、新道のある種メタ的なツッコミが見てる人に安心感を与えます。
(コントイン)(⑦51秒)
「結局、おにぎり屋やるんかい!」という尾をひくような笑い。
今回はそれの理想形のウケが取れてましたね。
ウィィィィィィィー、…開くの遅えなあ!(⑧58秒)
ドアオープンの音が長く、「まさかそのボケ?」と思わしてからの、一拍おいてのボケ。
なんというか人を食ったようなやり口ですよね。
顔をひし形にしてやろうか?(⑨1分3秒)
新道のツッコミが困惑であるからわかるように、ここはとりあえず伏線がてらのひし形。
積極的に笑いを取るわけではなくフリ目的で、「まあウケればその日、俺ら乗ってるんじゃない?」的確認の役目も。
ファラオの「オイ?」に対して、「え?」で返しているため、ここはコントから一旦外れています。
ウィーン(閉まる)(⑩1分12秒)
仕切り直して、ドアオープンからのドアクローズ。
そこらへんの若手なら、「入ってこいよ!」と早計にツッコだろうけど、ここは「?」という反応ですので、次のボケへのフリです。
… ブウーン(ドップラー効果)(⑪1分14秒)
そして、また一拍おいてのドアを透けるというボケ。
ドアオープンからドアクローズはそこに鏡が存在するんだという認識の共有のためのネタフリであり、本体はこっちなのです。
こういうボケを繰り返されると、「そんな初歩的なボケで笑わせるわけないだろ、あれはフリなんだよ」と言われてる気がしてちょっと憎いです笑
…僕は負け組です。
その通り。(⑫1分32秒)
仕切り直してやっと入店でストーリー進行。
いらっしゃいませからのオウム返し4連発からの、店員のイタズラ心を利用したボケ。
まあ、小学生でもやる手法なんですが、 おにぎり屋の店員という設定や新道というアングラ感漂う芸人の境遇から、「僕は負け組です」というワード設定が見事。
そして、今まで間をとって喋るファラオが間髪入れずツッコむという裏切りも重ねられてます。
庶民的なやり口が重層的に要素を乗せられ、仕上がるボケへ変貌!
顔をひし形にしてやろうか?(⑭1分39秒)
ツッコミが一拍おいているため、こちらも完全にフリ目的。
まあ、その次につなげるための奴ですねこれは。
三回だよ。(⑮1分41秒)
「何回言うんだよ!」に対して、この発言。
ここはアンタッチャブル的というかザキヤマが言ってそう。
得体の知れないトリッキーさだけでなく、唐突にベッタベタの笑いを差し込んでくるという意外性もあります。
お楽しみに。(⑯1分45秒)
そしてファラオが客席を向いて観客と対話。
これはボケ兼「ネタ中に本当に出てきますから忘れないでねえ」という新道からのメッセージがひしひしと感じ取られます。
レーレレ レレレレ レーレレ レレレレ レレレレ レレレレ ヤルヤルゥ♫(⑰1分56秒)
コントから降りて説教タイム再び。
「こんな簡単なこともやれないの?」という問いかけに一旦「え?」と聞き取れなかったかのように返し、もう一度、「こんな簡単なこともやれないの?」に対し、 ファラオが歌うという新たな方向性で持って行ってます。
二度目に「やれないの?」の部分を強調しており、「ヤルヤルゥ」の説得性を確保しようとしつこいんでしょうか。
それとも、オウム返しのボケがあった事からも似たような方向性の、「聞き取れない→聞き取れない→聞こえてんじゃねえか!」という方向性かと思わせーの、歌い出すという裏切りですかね。
深読みしすぎ?w
「私はきったないおにぎり屋さんだ」と言ってみろ。(⑱2分2秒)
対して、食い気味の「注文しろよ!」というツッコミのためこれは狙ったポイント。
ここはコント降りっぱなしで、そのファラオの要求に新道が乗るというのは、とりあえずこれだけいう事聞けば協力してくれるだろう、という素の譲歩が見えます。
…なんか今日は楽しいなw(⑲2分27秒)
そしてここで笑顔解禁の意外性!
客席をしっかり向いてからはにかむという魅せ方の工夫も忘れません。
…俺、親友だと思ってた奴に誰ですか?って言われた。(⑳2分39秒)
こんだけ協力したのにコントを進めてくれない新道はついに、ファラオに対して同情作戦を取るようになります。
情けがあるかと思いきや、超えてくるというベタなボケ。
ここは正直、見た目まんまの自虐されてもらしくないなーと思ってしまいました。
でも、この後ちゃんとコント進めるので、ファラオと新道のイケてない奴同士の協力体制が出来上がった合図として必要だった考えてもいいんじゃないでしょうか。
メーカーが色々試行錯誤した結果、お湯です。(㉑2分49秒)
再びコントイン。
メイプルの「お湯の煮込み」とかぶってしまいました。これはしゃーなし。
「挫折」というネガティブワードからブラック系の回答を想像するのですが、意外にもちゃんとこじんまりとしたボケ。
「挫折しなくていいから!」ってツッコミは雑な気もしますね。
まあ、その次の腰骨のための対比としてのボケですかね。
腰骨がないんですけど。(㉒3分6秒)
「『さっき』まであったのにな」というフリがボケの強度を高めてます。
やはりこういうディティールはちゃんと気を使ってますね。
これは絶妙なブラック加減が程よく馬鹿よっぽいボケだと思いました。
余談ですが、これの前の新道のフレーズが店員としての敬語のはずなのに、「あのさ」とタメ語で言い間違えてしまってちゃんと「あの」に訂正してるので、やっぱり彼の中でコントと現実の区別は明確につけてるというこだわりが見える気がします。
お釣り多めにもらえますか?(㉓3分14秒)
ここはザ・ベタ。
真顔で間を生かしてボケるやりとりがおぎやはぎっぽさを彷彿とさせます。
ボケの種類の投げ分けをきっちりと考えてますね。
逆にそれがネタがちぐはぐな印象になる可能性も孕んでいるのですが。
大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫だよ!大丈夫。大丈夫だよ!大丈夫。大丈夫だよぉ、大丈夫。
大丈夫なの?大丈夫だよ。大丈夫かぁ?大丈夫だぁ。大丈夫なの?大丈夫だよ。
大丈夫なのか?大丈夫だよ。大丈夫なんですか?大丈夫だよ。大丈夫ですかねぇ?大丈夫ですよ!
大丈夫かぁ?大丈夫だよ!大丈夫なの?大丈夫かぁ!?大丈夫だぁ!大丈夫ですよぉ!大丈夫なのかねぇ?
大丈夫だよぉ!大丈夫なの?大丈夫だよ!大丈夫だろ?大丈夫か?大丈夫なの?大丈夫かぁ?
大丈夫ですかー?大丈夫だよお!大丈夫なのぉ?大丈夫?大丈夫…大丈夫…(㉔4分5秒 、合計41秒間で40個!狂気!)
ここが今回のネタの見せ場、「お楽しみに」が1分45秒なので新道が質問を入れる3分23秒の時点ではほとんどのお客さんの脳裏には「ひし形」忘れ去られてたと思います。
新道も覚悟を決めたような感じで、かなり間をとってから、「今後の人生大丈夫?」と質問を入れているのが特徴的。
まあ、この手の連呼系するなら、ロケットスタートのフリの段階で一拍仕切り直ししといたほうが明らかに効果的ですからね。
約40秒間で40フレーズの「大丈夫」を連呼。
ニュアンスまで意識して書き起こしたのでわかりますが、かなり言い回しも千差万別にしているのが特徴的。
適当にやってるように見せて、案外ここのフレーズはガチガチだったという邪推さえしてしまいます。
まあ、ファラオは器用なのでアドリブっていう可能性も十分ありますが。
うねりの笑いが3回ぐらい来ていたのですが、最後はさすがにちょっと長すぎたような感じでしぼんでいます。
こういうのって計算して何度もネタかけるうちに感覚で大体を掴めるんでしょうか?それとも神のみぞ知るですかね。
新道の待ちの顔がなんとも言えないのがちょっとツボ。
…顔をひし形にしてやろうか?(㉕4分8秒)
そして、大丈夫連呼はフリだったんだよ!と言わんばかりの渾身の天丼!
まあ、予告した天丼を最も効果的に発揮するには、ネタが狂気方面にぶっ壊れたと見る人にイメージさせるしかないからこれが一番正解に近い方法だと思います。
さらには、「賞レースでチャレンジングなことする」という心理的ファクターも加わってくるので、さらに効果的!
もちろん、思惑通り拍手笑いをもぎ取りますが…
顔をひし形にしてやろうか?顔をひし形にしてやろうか!?顔をひし形にしてやろうか !顔を…以下略(㉖4分11秒)
間髪つかずにひし形連呼で混沌へ向かいちょっと笑い縮小。
ようやくここで新道の顔演技が発動します。カメラワークも相まってここは笑いました。
三回じゃなかったのかよ!?(㉗4分11秒)
しかし、驚く演技下手だなーw
被せということでまとまりがありますが、ひし形連呼のここが本来チャレンジングなセクションなんですよね。
どうもありがとうございました。(顔をひし形にしてやろうか㉘)
唐突な印象がありますが、まあ、三回って振っといて三回以上ボケるというオチなのでオチてます。
個人的にはこういう最後までボケながらモヤモヤと終わっていくのはちょっと苦手です。
「もういいよ」の一言があるとやっぱビシッと締まりますね。
このネタはかなり考えて作っている印象がありました。
こういうネタを分解していくのは面白いです。