小学校の給食の時だった。
その日のメニューにはツナパンなるものがあったのだ。
コッペパンにツナ、いわゆるシーチキンにマヨネーズを和えたものを載せた総菜パンにありがちな奴。
僕はシーチキンとマヨネーズが大好きだったので嬉しかった。
しかし同じクラスのある奴がこのパンを見て、声を上げたのだ。
「ツナって猿の脳みそらしいぜー!」
言わんとしていることは分かる。
コッペパンの上に無機質に載せられたそれは、ツナごとベーカリーしてあるせいか、焼き目が付いて脳みそのひだひだ感がとても出ていたのだ。
その発言をきいてからどう見ても小動物の脳みそにしか見えなくなった。
その的を得た的確なたとえは多くの共感を呼び、他クラスにも伝搬していった。
小学生なので「ツナ」という単語の意味が本当に分からず、脳みそと信じ込んでいる奴もいた。
そんな事もあって給食が始まってもいっこうに皆、ツナパンに手を着けない。
特に女の子たちは本当に猿の脳みそを食べるかのように敬遠していた覚えがある。
ツナパン大好きな僕でさえ、何か気持ち悪くて手を付けれなかった。
匂いを嗅ぐと、なんだか脳みそ臭さみたいのも感じとれられたのだ。
脳みそ臭さが意味分からないけど笑
結局、クラスの八割方がツナパンを一口も食べずに廃棄した。
まさに集団ヒステリーというか集団心理が悪い方向に向いてしまったのである。
この猿の脳みそパンという事実を知った他のクラスでも同様の事が起こったのは言うまでもない。
それ以来、ツナパンは表舞台から姿を消し、給食界から抹殺された。
もし僕が勇敢に、「みんな騙されるな!コレはシーチキンと言ってマグロなんだ!証明する!」と言って旨そうに食べたら、この騒ぎは治まったのだろう。
非常に後悔している。
英雄や革新を起こすものは最初は理解されないのだと感じた心温まるエピソード。