A「ハイ?」
B「あっ、隣に住んでるものですけど、突然すいません」
A「どうも、どうかしたんですか?」
B「実は肉じゃがつくりすぎちゃって、もしよかったらと思って」
A「ほんとですか?わざわざすいません」
B「いきなりこういうのもどうかと思ったんですけどね」
A「いえいえ、有り難いです。しっかし肉じゃがとか久しぶりに食べるなー」
B「よかったです。お口に合うかどうか」
A「ありがとうございます。じゃあ遠慮なく。すいませんねー」(肉じゃがを受け取り、扉を閉めようとする)
B「八百円になります」(扉を押さえて)
A「えっ?」
B「だから、八百円」
A「えっ??」
B「肉じゃがの、代金が、八百円になります」
A「お金取るんですか?」
B「そうですよ。知らない人に無償で配布するなんて、npo法人じゃあるいし」
A「民間?」
B「はい、最近流行の有限会社です」
A「そんな流行ってないですけどね。てか、いきなり知らない人の家に押し掛けて、代金取るんですか?肉じゃが詐欺じゃなですか」
B 「詐欺じゃないです。立派なビジネスです。肉じゃがビジネス、通称ニクネスでやらして貰ってます」
A「なんすか、それ!どちらかと言えばジャガネスでしょ!」
B「えっ?」
A「引っかからなくていいよ!おれのセンスだから!大体、そういうのは確立されたビジネスモデルとなってから、日系トレンディとかの雑誌がつけるんだよ、雑誌が!」
B「今のジャガネス、いいですね。もし良かったらこの地区のリーダーになりません?センスありますよ」
A「唐突だな。ナンだよ、リーダーって!」
B「厨房で黙々と肉じゃがを調理するジャガネス界では一番偉い役職です」
A「作る方なの!?確かに肉じゃが作るのは重要だけど、普通リーダーってのは指示を出したりするんじゃねえのかよ」
B「職人気質に憧れがありませんでしたっけ?」
A「ねえよ!俺の何がお前に分かるんだよ。肉じゃが職人なんてださくてお母さんに自慢できないよ!」
B「まあまあ、リーダー、そこまで怒らなくても。こっからプランを練り上げましょうよ」
A「まだ、リーダー就任してないって!顧客だよ!大体ね、そんな押し売りされたら嫌ですよ。こっちだって、あなたみたいな隣人に気使って、貰ってあげてるだけなんですから!」
B「やさしさ、ですか」
A「そうだよ!断ると気まずいし、こういうのは何となく貰っちゃうもんなの!そこをつけ込むのは酷いって。」
B「そこなんです!」
A「えっ?」
B「普通、隣人だったら、うけとっちゃいますよね?これはその善意を利用した詐欺まがいの押し売りなんです!」
A「いっちゃったよ、押し売りって!」
B「はっ!これがまさかメンタリズムですか!?」
A「お前が勝手にいったんじゃねえか!誰がダイゴだよ」
B「…コンプリート」
A「それはdrレオンだよ!時空を捉える方の奴!」
B「…サプライズ」
A「それはセロな。看板からハンバーガー出す奴。てかお前、胡散臭いマジシャン好きだな」
B「…ジャガニーク」
A「だれだよ!しらねーよ!」
B「あっ、これ僕の決め台詞かつ当社のキャッチコピーです!」
A「適当過ぎるだろ!糸井重里マジ切れするぞ。大体お兄さんね、こういうあこぎな商売は辞めた方がいいよ。いつか絶対後悔するから。な?真っ当に働いて、真っ当に生きようぜ」
B「すいません、私肉じゃがを作るのが大好きでつい、作り過ぎちゃうんですけど、友達もいなくて、誰にも食べてもらえなかったから…、でもタダであげちゃうと、貧乏だからお金も掛かるし…何とかビジネスにしようと足りない頭を使って必死に考えたんですよ…」
A「そうなのか…大量に作る方が悪い気もするけどな…」
B「今時、肉じゃが専門店を開いても絶対はやらないだろうし。こういう形でしか思いつかなかったんですよ」
A「専門店って…確かに頭足りてないな…てか、肉じゃが以外つくれないのかよ…わかった!俺がお前の肉じゃがを買ってやる!」
B「本当ですか!」
A「成功するといいな、このビジネス!」
B「ありがとうございます!」
A「じゃあ八百円ね。ハイ」
B「アッ、配達料が別で九百円掛かるので合計、千七百円になります」
A「たけーよ!元の値段超えてんじゃねーか!しかもお前となりの部屋だろ!マジで押し売りだな!」
B「ごめんなさいリーダー。まだ業界のしきたりが良くわかってなくて」
A「だからリーダーじゃねえよ!城島かよ!あと業界とかないからね!こんな隙間産業!てか産業でもねえよ!」
B「とりあえず、一口でいいから食べてみてください!味にだけは自身があります!それから、やっていけるか判断しますんで…」
A「わかったよ、一口だけな。パクッもぐもぐ」
B「どうですか…?」
A「うーん…純粋にまずい!」(長さんのダメだコリャ的テンションで)
江戸っ子でもないのにツッコミが標準語になるのは何故だろうか。