おそらく現在継続中の深夜ラジオで一番レベルの高いコーナーだと感じています。
ノールールかつ長文OKというアメリカの試験のような自由度を誇り、各個人の脳内の「面白い」や「思考の断片」がバシバシ感じ取れるこのコーナーはおそらく、ANN史に残る伝説のサイココーナーとして名を残すことでしょう。
アルピー二人のリスナーへの人格否定、未知へのものの恐怖などがサイコさを引き立てる要因であり、「リスナー=やばい奴」という認識があるのが今までのラジオではあまりなかったんじゃないかと思いますね。
媚びることなく、「頭おかしい」と言われちゃったら、そりゃもっと頭おかしいことするよってことで、このような混沌が生まれたのだと考察できます。
またひとネタがはまったリスナーによるネタのシリーズ化というのはラジオにはありがちで、この番組でも起こるんですが、程よいところで浄化作用が働くのもいいところでしょう。
他のリスナーがそのネタに追随せず、独自ルートを突っ走る傾向があるのもいい風潮ですね。
今日はそんなサイココーナー「家族」に送った僕の没ネタを晒してみたいと思います。
もうこれは葬式です。
生前、面白かったとかそうでなかったとかはどうでもいいんです。
ひとネタ書くだけでこんだけ困るのに、高水準のものを毎週送ってくる職人はリスペクト必須です。
お父ちゃん、お兄ちゃん、聞いて欲しいことがあるんだ。
「おい!お前、授業中だぞ!そこで何やってるんだ!
こら!逃げるんじゃない!おい!
…やっと堪忍したようだな。
お前、そんなんでいいのかよ?高校卒業できないぞ?
わざわざ学校まで律儀に来るくせに、屋上で授業だけはサボるなんてなあ。
もったいないよ、まったく。
…でもな、その気持ちわかるよ。
俺も昔はこうだったもん。何かに反発したくなる時期ってあるよ。
人生どうにでもなれと思って、バカなことしちゃうんだよなあ。
…ほら、隠したもの出せ。
影でこそこそやっててもばれてるからな?」
そう言うと関羽は堪忍したかのように隠していた青龍偃月刀を取り出す。
3メートルはありそうなその青龍偃月刀を関羽は申し訳なさそうにうつむきなが
ら差し出す。
「せ…青龍偃月刀!?
ほら、屋上で隠れてやるものつったらタバコか酒ぐらいなもんじゃないのか?
ゴリゴリのワルでもシンナーだろ!?
それか、ナイフとかそっち系だとしても出刃包丁でマックスじゃないのかよ!
青龍偃月刀なんて刃物カースト最上級だぞ!
しかも、重すぎる!
パッと持った感じ、重さは八十二斤はあるんじゃないか!?
八十二斤つったらあれだぞ、ベビーカー4台分じゃないか!
お前こんなもの持って毎日通学してるのか?」
関羽はこくりと何も言わずに頷く。
2メートルはありそうな背丈に、丈夫な体つき。
スポーツをやらすには十分な体つきだった。
彼に足りないものはハート、何かに打ち込む闘志だけだ。
「…お前、プログラミングに興味あるか?
お前ぐらいのポテンシャルだったらすぐに3国統一できると俺は思うんだ。
その有り余る力を青龍偃月刀なんかに使わずに、プログラミングに活かして見た
らどうだ?
このまま、隠れてこそこそ青龍偃月刀を振りかざすだけの人生なんて面白くないぞ?
どうだ?その青龍偃月刀をキーボードに持ち替えて、やってみないか、関羽?」
自らの青龍偃月刀を否定された関羽は何も言わず劉備のクソ先公の野郎から青龍
偃月刀を奪い返し、その美しい太刀を振るった。
びゅん、と風を切る音が聞こえる。その刹那、劉備のクソ先公の野郎は倒れこんだ。
「…うぅ」
劉備のクソ先公の野郎はうずくまる。
関羽は無駄な殺生はしない、峰打で済ましていたのだ。
「もうこんな季節か…」
関羽はそう呟くと、青龍偃月刀を担いだままクラスに戻り、サボっていた歴史の
授業を受けた。
突如入ってきた関羽に3年蜀組の生徒は動揺を隠せない。
しかし、筋金入りの青龍偃月刀使いの彼の前には生徒はおろか、教師ですら注意
できないのであった。
張り詰めた緊張感が教室に漂う中、何事もなかったかのように授業は進む。
「…じゃあ、1192年とある人物が鎌倉に幕府を開きました。わかる人、いるかな?」
歴史担当の張飛先生が恐る恐る生徒に投げかける。
生徒たちは当然、関羽にビビり、ノーリアクション。
そんな中、静寂を切り裂くようにぴん、と青龍偃月刀を振り上げる関羽。
「じゃあ、関羽くん。おねがいします」
張飛先生は緊張した面持ちでそう言った。
「…わかりません!」
張り詰めた空気が一瞬漂うが、次の瞬間、一人が吹き出す。
そしてまた一人、また一人と吹き出していき、笑いの連鎖は教室中を支配した。
「わからんて!関羽、おま!」
「そりゃそうだぜ、鎌倉幕府っつったら、千年後だべ。千年近く未来の話なんて
わかるはずねーべ!」
「関羽くんには参ったわね、まったく。でも、そんな抜けてるとこが好きかも」
先ほどの緊張感とはうって変わって、笑いが絶えない教室となった。
やっと溶け込めた。
関羽はそう思うと、青龍偃月刀を窓から投げ捨てた。
この話を聞いたスティーブジョブズはすぐさまマッキントッシュ製作に取り掛
かったという逸話もあるが、またそれは別のお話である。