今回は相変わらず日本語詞、そして作曲体制が以前の分業から合作に戻るという変化がありました。
その割には曲の元ネタを尊重した形というか、各個人の特色が出まくった楽曲が多数あった気がします。
所謂、これまで築き上げてきた「バンアパ感」みたいなのから脱却を果たしており、そこが受け入れなれない人もいるらしく、僕個人としては常に新たな方向性は歓迎しているので、そういう部分が賛否両論分かれるところなのでしょう。
それでは全曲の感想を。
M-1 (opening)
8bitのファミコンサウンドを取り入れたイントロ的な楽曲。
今回のアルバムはCDという形であるなら、楽曲の羅列というわけでなくコンセプトに基づいたものを作りたいという意向があったらしく、アルバム名の通り、ゲームを後付けでコンセプトにしているそうです。
それゆえのファミコンサウンドがスキットでフィーチャーされています。
ちなみにこのファミコンサウンドはYMCKのプラグインを使用しているらしく、フリーでダウンロードできるので、我々庶民にも簡単に再現することができるのでオススメです。
M-2 笑うDJ
しょっぱなから爆速なサウンドで今までのバンアパ感をいきなり打ち砕く曲です。
木暮曲であり、「ジェットコースターでキラキラの中を爆走する」という脳内イメージに基づいて作られたらしいです。
確かにジェットコースター感はハンパないでね。
ドライブ中にこれをかけるとノリノリで運転できるので、なかなか気持ちいい。
今回のアルバムの曲に総じて言えることですが、ライブで盛り上がるものが多い気がします。
今までの曲は初期のものを除くと、一人で音の中に酔いしれる様なものが多いとおもうんですが、今回は下手すりゃモッシュとかダイブを誘発するような楽しい曲が多い気がします。
M-3 ピルグリム
PV曲であり今回のアルバムではとっつきやすい曲であります。
続 ・夜の向こうへを意識して合宿中に作られたものだそうです。
でもまた別のベクトルのポップさ溢れるものに仕上がったと感じています。
特に開口一番の川崎ギターの迸る安ポップ感!
ああいくダサい一歩手前みたいなベタフレーズはかなり好みですね。
荒井さんの意識する「再放送の夕方アニメED」感みたいのが遺憾なく発揮されていると思います。
とにかく今回の荒井曲は、ソロアルバムの影響もあってか、バンアパでの封じ手を解禁した気がするんですよね。
いままでだったら意図的に避けてきたストレートすぎるメロディとか展開をバンバンつかっている気がします。
バンドとしての尖りがとれたといいますが、いいものはなんでも取り入れていこうと言う、力の抜け具合が大きく楽曲に作用している気がします。
M-4 廃棄CITY
明らかに川崎のギターフレーズが元ネタでそっから広げていった感のある曲。
歌詞は方南町のスタジオバンキッシュを追い出された時のことを歌っているそうです。
特に間奏のジャジャジャッジャっていうキメ連発のアニソン感に笑ってしまいます。
M-5(save point A)
電車ノイズが混ざったこれまたファミコンサウンドのスキット。
木暮さんが自ら集音しに行ったそうです。
ここで一旦一区切り的な。
M-6 禁断の宮殿
読み方はオフィシャルで「きんだんのコート」だそうです。
COURTで宮殿と訳すあたり、「キングクリムゾンの宮殿」が題名の元ネタでしょう。
もちろんパンパじゃないゴルフ感漂うので原曲に間違いありません。
もうイントロのひねくれた入りから素晴らしいです。
歌詞もまさに腹節といった感じで、これがスタンダードなバンアパ感というか、バンアパの根源的な部分なんだなと自覚せずにはいられません。
最後のソーシャルロッカーの部分のベースの入れ方はたまりません。
もろフュージョン笑
M-7 殺し屋がいっぱい
stanleyやprime ministerのような気の抜けた曲。
題名とのギャップに笑いますが、歌詞はネットイナゴとか炎上を皮肉る感じのものですね。
歌詞の真意に気付けないと、サビの「君を殺さないとさ、眠れないから」とかもろ銀杏ボーイズっぽくて笑いました。
ミネタが歌ってても違和感ないというか笑
M-8 遊覧船
きました今回のアルバムのお気に入りナンバーワン。
クソ長い思わせぶりなイントロから急展開し、落ち着いたメロウなアコギサウンドに落ち着くところは笑いました。
メンバーの中でもこの曲が一番合作したらしく、イントロは川崎でそっから丸投げという方向性の見えない感じが見事の反映されています。
でもなんといっても、しっとりとしたメロディの良さとアルペジオの感じだよね。
もろツボというか、情景が見事に浮かび上がるのが見事。
個人的には東南アジアの夕方のビーチってのが浮かびました。
あと屋形船の店内BGM的要素もある 気がします。
M-9 月と暁
今回の問題作でしょう。
某匿名掲示板では「アルフィーっぽい」とか「ありきたり」とか「バンアパでやらなくてもいい」みたいな意見が多発していました。
でも逆に僕はバンアパでこういうストレートな曲が聴けたことが嬉しいんですよ。
ダサ邦ロック的なメロディが好きなんですねー。
サビ前の川崎ギターのメロディもいいし、細かい部分で見れば結構ツボる部分が多いんですよ。
特に、「淡く切ない〜」の前の部分からの川崎ギターのフレーズなんてツボすぎます。
パワプロ感がたまりません笑
まあこの曲を再生するときはどっかで恥ずかしさが同居してますがね。
M-10 (save point B)
ベーコンアンドエッグスのリメイク曲。
日本語アレンジを効かせ、歌い上げるのはご存知チャニー氏。
バンアパって改めて家族経営的なバンドですよね。
M-11 裸足のラストデイ
純度の高い原曲二発目。
今回のアルバムは共作らしいですが、原曲だけは相変わらず単独制作らしいです。
原さんのストイックさからすると他の人に自分の曲を委ねられないんでしょうね。
でもそのかわりに妥協を許さない細かなところまで気づかされるものが出来上がると感じています。
キチガイ連呼はもはや様式美。
行き違いなど韻を踏むテクまで披露しています。
ライムスター宇多丸のダブルミーニング連発ソング「キキチガイ」では巧妙にワードを隠しているのに発禁になったのに、ど直球で「キチガイ」連呼、しかもラジオで流そうとしたのは笑ってしまいます。
でもキチガイってワードは別に笑わせたいんじゃなくて、原さん的に素敵な生き方をしてる人の総称なんだと思います。
まあ「自分の芯を持って生きてて、世間に理解を求めていない生き方をする奴」みたいなニュアンスでしょう。
あとラストデイ連呼はレコーディング最終日だったからというのもあるらしいです。
M-12 消える前に
まさかバンアパでエモが聞けるとは思っていませんでした。
サビのまごう事なきエモさは僕のルーツがエモ方面にあることからも大好物です。
あとBメロのユーミン感すごくないですか?
サビ前のやけくそタッピング昇竜アンドツーバスも笑えます。
たまにはこういうのもあってもいいじゃないって感じですかね。
楽曲の幅は広がったし、いろんなジャンルつまみ食いって感じで、ある種の楽曲大喜利チックな楽しみ方をすればいいんですよ。
勝手に終わったとか裏切られたとか嘆いてるやつは思い出の中だけで生きてればいんですよ。
M-13 最終列車
今アルバムのマスターピースですね。
バンアパ屈指の美メロが漂うこの楽曲。
荒井曲プラス大サビは小暮さんでもともとヴァンヘイレンを目指したとかいう意味不明な成り行きもあったそうです。
とにかくメロディがいい!
もうど直球ど真ん中展開が炸裂しており、ずるいなーっての連続です。
大サビなんて号泣必須ですよ。
個人的にはメロコアを聞いてたときのときめきが蘇ってきましたね。
メロディが良すぎて、何回もループして再生するあの感じ。
もうなんというか、この曲大好き笑
ちなみにアウトロは荒井さん屈指の悪ノリらしいです。
M-14 (ending)
最終列車のアウトロからそのままファミコンへフェードイン。
こうやってシンプルな音源で聴いても、元のメロディの良さが引き立ちますね。
バックにほのかにメンバーの会話を流しているらしいですが、内容が内容だったため、聞き取れないレベルに加工が施してあるとかなんとか。
ざっと総括すると、今回のアルバムは本当にバラエティ豊かで総合商社感があるというか、オープンワールドっていうコンセプトでまとめないと、本当バラバラなんですよね。
でも、こまかなところをちゃんと聞けば、バンアパらしいところがたくさんあるし、「おっ」って思う展開とかフレーズもビンビンにあるのです。
だから根底の部分ではなにも変わってないっちゃ変わってないんですよ。
そりゃ同じ人間がつくってるからそうなんですけど、やっぱり、バンアパのアルバムってのは聞き込むほど味が出てくるもんだなと思いますね。
他のアルバムに比べると各曲の平均点は高くないと思いますが、遊覧船と最終列車というマスターピースを生み出してくれたので、ある点では突出したアルバムだといえるでしょう!